創作

■目次■

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昔話をしてあげる
遠い昔のものがたり
君がそうなるすべてのはじまり
今ただこのときを生きている、君が君になる所以。

それは きっと最初の物語



 くるり くるくる、環がまわる

 降りそそぐ黄金吸収し、くるり・くるくる、環がまわる
 因果の欠片をとりこみながら、黄金に輝く環はまわる

 それが在る限り、在り続ける

 在り続ける限り、それは在る

 途切れることなくつむがれる、それらは金色の環に刻まれる。

 それらは、すべての輪廻の物語


【地球遊戯・昔話】
〜求心〜



「忌々しいと思う」
 力の大半を奪い取った相手に。
 笑みの表情、つくったつもりなのだろう。そんな顔して語りかけ。
 口元きゅぃっとつりあがり、うっすら細めたその瞳。
 笑みの形の表情なれど、それを笑みととらえることは、至極難しいと思えるカオで。
「存在を願う者たちが黄金を降らす」
 背後の金色振り返り、小さな舌打ちひとつして。
「黄金は環になり、環となった黄金は蛇に力を与える」
 虚空にふっと目を移し、今もこちらを見ているであろう、番人を睨んでまた環の方を顧みて。
「力を得た蛇は環を護り、我の手すらもかすらせぬ」

「……忌々しいと思う」

 笑み。

 ――――
 つかまれた手に力がこもる。

「だから」

 ななつの星のなかでも、異端の力をもつおまえ。

「おまえを、もらう」

 遠い昔に我を砕いた、星の欠片たるおまえ。

 世界と世界の狭間を砕く、薄紅のちからをまとうおまえ。

「うれしかろう」

 星が望むは。

 そのちから、用いて壊れた世界の欠片たちをまだ生きている世界に溶け込ませること。

「おまえのちから、我が喰ろうて」

 望むは。

 そのちから、用いて世界すべての狭間を壊し、ぶつけ、すべてを混沌へと溶かすこと。


 また。笑む。



   憶えているのは、ただそれだけ。
   それは、自分が自分であった最後の記憶。

   そして、自分に叩き込んだ使命、ひとつ。

  ちからを、渡す。

  自分をもっとも強く望む、あれ以外の者に。

  ちからを、渡す。


 だからそれは。まだそこに在る。

  全存在かけて望む、想い果たすまではまだ、自己を失えぬと。望んで。
  そう。ただひたすらに。ただそれだけを。


    ……闇のなか。  ぽつりと。
  動き出す。




 闇のなか、ぽつりと。

 独りで佇む小さな少女。
 住宅街にしては珍しく、どーんとでっかい空き地にひとり。
 月のない夜、頼りはまわりの民家の光と、か細く降ってくる星明り。
 風もなく、音もせぬ。
 静寂と闇に包まれて、ぽつりと佇むは幼い少女。

「……榊、だいじょうぶかな」

 空き地を仕切る壁から頭だけ出して、少女を伺う少年ひとり。

「一応護身結界から動くなとはゆーたが」
 出ちまったら意味ないんだよなー

 同じく壁から頭だけ、ひょっこり覗かせる青年ひとり。

「……那由他さん……」
 頼りになる(はずの)先輩の、頼りにならないことばを聞いて、がっくり真理が肩落とす。
 それでも食ってかからないのは、迫る何かを感じてるから。

 餌はすでに感知され、欲するものは動き出した。

 ふと。見やる。
 自分より、はるかに感応力の鋭い先輩に、視線を移す。
 目を。みはる。
 これまでどんな大物にだって、悠々とぶつかってきた先輩の。
 表情が硬い。腕に鳥肌。脂汗。

「那由他さん……」

 さっきと同じに呼ばわった。つもりだったけど。
 声の強張りを耳にして、自分の緊張を思い知る。

「ん?」

「何がくるんです?」

 この人はもう、きっと知っているはずなのに。

「さぁな」

 少し青ざめた顔で。まだごまかそうとしてるのか、にやりと笑って真理の頭をぽんぽん叩く。
 問い詰めたいと思ったけれど、またかわされてしまうんだろうと。
 考えて、真理はため息ひとつつき、再び榊に視線を戻す。
 闇のなか、ぽつり。
 佇んでいる小さな少女。迫るもの、感じているのかいないのか。
 月のない、夜空見上げてひぃふぅみぃ。
 星の数を数えてる。

 闇の中、ぽつり。
 佇むは小さな少女がひとり。
 それを壁に隠れて覗く、少年と青年がひとりずつ。

 場が場なら、なんだなんだと笑って野次馬が通りすがる光景も。
 今のこの時この場所は。
 ただただ静寂と緊張と。
 そして得体の知れない何かに感じる、今はまだ小さな恐怖。



  闇のなか、ぽつり。

 疲れた身体に渇を入れ、走り抜けてく狐が一匹。
 あの日あの時あの瞬間、つかめなかった手の持ち主の。少女求めて駆けていく。
 悔しさと、逢いたい気持ち。
 想いはちからになるとの父の教えのとおり、それは綺羅に力をくれる。


  闇のなか、ぽつり。

 もはや自己などなきに等しく、それでも想いがそれを動かす。
 力量見誤ってしまい、壊した少女への慙愧の念も、自分を動かす力に換えて。



   求めるは。

     闇の中、ぽつりと佇む幼い少女。


  そうして、闇が 揺れ動く


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......やっと。すべてが動き出しました。
境界を壊してしまえば、きっとすべてのものは混ざります。
ひとつになります。それを、望むものがいます。
だけど、それは個であるすべてをなくすコト。
それが受け入れられないからこそ、星の欠片はしてるのです。
あ...間道の『神話』を読まれたほうが、この先の展開は判りやすいかも;