たちが帰ってきたら、いろいろ話したいことがあった。
レイドとラムダが和解したこと、必然的にアキュートとも判り合えたこと。
ハヤトたちのおかげだよ、ってみんなが云うけど、むしろみんながいたから、こんなことが出来たってこと。もそう思うよな?
それから、ミニスっていう子がサイジェントに訪れてたこと。
シルヴァーナっていうワイバーンが、街中巻き込んだ騒ぎになったんだけど。
フィズとすっごいケンカしてたけど、最後には友達になったんだよってこと。
もうあの子は聖王都に帰ってしまったけど、にも逢わせたかったな。
――でも。
これは話したくない。な。
――でも。
やっぱり、話さないといけないんだろう。な。
もっとも、たちが帰ってくるのが、これらが片付いた後だったらの話なんだけど――
ことの起こりは、ハヤト&トウヤのペア。そして、アヤ&ナツミのペアがそれぞれもってきた。
「これ以上、悪魔を喚ばせるな!」
サイジェントの城門前を舞台に繰り広げられる戦闘のさなか叫ぶのは、フラットにはなかった顔だ。
それもそのはず。
つい数日前、ガゼルとハヤトとトウヤが見つけて尾行した怪しげな召喚師――こと、ギブソン・ジラール。
「騎士さんたちは引っ込んでてちょうだい、分が悪いわよ!?」
叫んで、ペン太くんボムとかいう召喚術をどかどかぶちかましてるのは、ミモザ・ロランジュ。
ギブソンの同僚、というか、相棒、というか。とにかくそんな間柄だそうだ。
彼女に逢ったのが、アヤとナツミ。
こちらは平和的に、サイジェントの散歩中に遭遇したとのこと。
「ヒャーッハハハ! どれだけ倒してもムダだッ!!」
黒い……黒い宝玉を抱えた男が吼える。――迸る、淀んだ紫の光。
目を灼く強烈な閃光が、一瞬、視界を奪う。
その間に来る攻撃は避けたものの、光が去ったあとの光景を見て、ハヤトたちは愕然とする。
……悪魔。
サプレスに住まう、悪意の化身。
これまでに十体以上倒したはずの存在が、再び補充されていた。
黒い宝玉によって。
それを操る、バノッサの手によって。
「くっ……!」
数には大技で対抗したいところだというのに、悪魔達は数に任せて次々に波状攻撃を仕掛けてくる。
唱えかけた詠唱を横手からの攻撃で遮られて、なかなか機会がつかめない。
「どうして――こんなことに……っ!」
発された、アヤの叫びはたぶん、ここで戦う全員の心境だったろう。
数日前には予想さえしなかった戦いに巻き込まれた、彼ら全員の。
――そう。
ことの起こりは、ほんの2、3日前。
バノッサの動きがないのを不審に思ったハヤトとトウヤが、北スラムをこっそり覗きに行ったことから、それは始まっていた。
レイドとラムダが和解したことも、まだ記憶に新しく。
そこに、邪魔者をひとまとめに排除するため乱入したバノッサが、召喚術のようなものを使ったことも、記憶に新しい。
そんな日に――この始まりは、あったのだろう。
「……どういうことです!?」
「――――」
「黙ってねぇで答えろ、鬼モドキ」
「まーちゃんは逆に黙ったほうがいいと思うけど」
「ケッ」
……
「ふふ……」
ずたぼろになって、瓦礫の上に倒れていた自分の傍に。
唐突に現れたそのふたりは、よく見覚えのあるふたり――ここ数日、見なかったけれど。
でも、ちっとも変わらないそのふたりのやりとりに、カノンは、痛みも忘れて笑みをこぼしていた。
「何があったんですか?」
漫才をやめて、が再びカノンに問う。
「なんか、前よりぼろぼろになってるんですけど。このへん」
いつかの北スラム半壊が、実はこのふたりの仕業だと知らないカノンは、「そうですね」と頷くのみ。
それを不快に思ったのだろう、まーちゃんがさらに、何か云おうとしたけれど。
「…………どうして、いてくれなかったんですか?」
「は?」
「…………どうして……この間、あなたたちがいてくれなかったんですか?」
「あァ?」
云ってもしょうがないのは判ってる。
逆恨みなのはわかってる。
でも――
いてほしかった。
来てほしかった。
数日前、廃工場で、バノッサを見つけたフラットのメンバーが、彼とことを構えたときに。
……この人たちに、あの場に、いてほしかった……