からころ、からころ。
ミスミが念入りな支度をしてくれたおかげで、たちが御殿を出るのは他の皆に比べて随分遅れてしまった。
先に行くねー、と、トリスが庭先から告げていったのは、そろそろ日が沈み終えるかどうかというくらい。今はもう、夜の帳が島をとっぷり包んでいる。
そんななか、神社の灯りを目指して一路、とミスミは風雷の郷を歩いていた。
「これ。そう急がずとも逃げるものではあるまいに」
慣れない着物は歩幅が著しく制限される。
普段どれだけ大股で歩いていたんだろうか、一瞬遠い目になりかけたのも束の間。歩幅が稼げないなら歩数で補うのみだとばかり小走りに道を行くの背に、苦笑交じりのミスミの声がかけられる。
「え、でも」
少し速度を落として、は鬼姫を振り返った。
特に走る体勢にならずとも、ほぼ一定の距離を保ってついてくるミスミ、やはり慣れの差というやつだろうか。
「やっぱり、時間が勿体無いなって。そりゃ、いつもならあんまり気にしなくていいんですけど」
――今日ばかりは。
この、これからの、祭りばかりは。
「一晩だけですから」
「……」
ミスミはほんの少しだけ、微笑に別の何かを織り交ぜて頷いた。
そう。
これから神社でお祭をする。
みんなで準備しておめかしもして――この島のみんなと、アヤたちと、みんなで。
夜通し。
この晩。
この一夜限りの。
そうして夜が明けたら――――