「っていうか、そしたらあたしたちもはぐれ者じゃないのかなーとか思ってみたり」
「いやいやいや、たしかにあたしら海賊だから、そーいう意味じゃあ間違ってないんだけどさ」
いくらなんでも、あの子たちまではぐれ者扱いしちゃあ、ちょっとかわいそうなんじゃないの?
「そうよ。あの子たちはまだ、まっとうに人生やってくつもりが大有りなんでしょうしね」
「……はい。前言撤回シマス」
今日も一日が滞りなく過ぎて、日が暮れた。
子供たちは早々と寝床に潜りこんだ夜更け、起きているのは海賊と客人と、家庭教師とその他1名。――と一匹。
「ぷ」
すっかりそこを定位置としたプニムが、慰めるように、肩を落としたの頭をなでてくれた。
目の前の人たちも、簡易トーテムポールを見慣れてしまったのか、眺める視線にもはや面白がる意図はない。
……それはそれで、ちょっとばかり物悲しい。
「それにしてもすごいなあ。ぽんっと誓約しちゃうなんて」
そのプニムの頬をつついて、感嘆の声をあげるのはレックスだ。
召喚師でもないが、特例中の特例の条件下とはいえ、あっさり誓約を交わしたことに対してのものである。
隣にいるアティも、うんうんと、やっぱり目を輝かせて頷いていた。
「何を云ってるんです。貴方たちも、特例でしょう」
苦笑して、ヤードがレックスとアティに告げる。
「そうだな。なんたって、四界全部のと誓約が出来ちまうってんだろう?」
カイルの云うとおりである。
身に宿った剣の力だろうとヤードは云うが、ともあれ、レックスとアティは、四界すべての存在と誓約の儀式を行うことが出来るんだそうだ。
それが判明したのは、島の探索に出たカイルとヤードとの戦いのときだったらしい。
どれほどの驚きがその場に生まれたか、手にとるように、とはいかなくても想像はつく。
――その声、至源より生じて悠久へと響き往く
――その力、運命を律し過去と未来の糸を繰る
誓約者と調律者。
の知るかぎり、四界と誓約を行える存在は彼らぐらいしかいなかった。
ついでに、二代目誓約者を知ると違って、ここの人たちにしてみれば、伝説でしかない力、というわけだ。
剣の継承者として選ばれたことにより、まさかそんなオプションがついてくるとは、かっぱらって逃げてきたヤード自身も知らなかったことだとか。
「でもさ、そんなスゴイ力があっても、島を出る役には立たないんだよねー」
あははっ、とソノラが笑う。
「……そうなのよねえ」
と、こちらはしんみりと同意するのはスカーレル。
「やっぱ、さっさと船を直さないと、海賊稼業に戻るどころか海にさえ出れないわね」
「手間、かかりそうなのかな? やっぱり……」
「勝手が違うワケよ。うん。ましてホラ、部品づくりから始めてるんだし」
カイルたちの話によれば、まずカイルが船長兼操舵士。
スカーレルが、航海士にしてご意見番。
ソノラが、砲撃手。
ちなみに、なんかナチュラルに海賊一家にカウントされることの多くなってきたヤードは客人だ。そういう意味では、家庭教師コンビと生徒カルテット、あとも同様。
以前もちらっと話はしたが、要するにこの面子では、専門の修理屋なんていないのである。
「あ、でも……ロレイラルの集落があるんですよね、たしか?」
「アルディラさんのところですね?」
首を傾げて問うアティに、そうそう、と頷いて。
「あそこだったら、何か要らないやつから使えそうなもの分けてもらえたり出来ませんかねー」
「そっか。それいいな」
ぽん、とレックスが手を打ち鳴らす。
「今度案内してもらうときに、俺、頼んでみるよ」
「おいおいおいおい、まだまともに行って見もしてねえのに、皮算用すんなよ」
力ない裏拳を繰り出すカイルだが、本気で制するつもりはないようだ。
船がなければ困るのは、何より持ち主であるカイル一家なのだから。
「そのためには、たくさんお話して仲良くならないとですね」
ほんわか、アティが微笑んだ。
――が。
頷く、という動作に移して同意を示したのは、レックスとだけだったりした。
カイル一家+客人は、やっぱり、どことなーく不安かつ微妙な表情を隠せずにいたのである。