船に戻ったのは、すっかり日も暮れてしまったあと。
先に帰っていたカイルたちが用意してくれていた夕食をかっこんで、話すのはもちろん探検の結果。
「――そうですか……そんな理由が」
はぐれ召喚獣たちの暮らす島であると知って、いちばん衝撃を受けたのは、やはり現役の召喚師であるヤードだった。
それは、常からリィンバウムに暮らす者すべてにとって、重い問題である。
ましてや召喚師は直接、その原因とかかわっているのだから――さもありなん。
召喚獣を送還することが出来るのは、喚びだした召喚師のみ。
それをされなかった召喚獣が、はぐれと呼ばれる存在になる。
不慮の事故などで主を失ったのなら、仕方がない。だが、中には送還の義務を知っていながら、召喚獣を放り出すような者もいる。
さらに、この島はそれに輪をかけた過去があるというのだから……
「……そうだったんだ」
一緒にそれを聞いていた子供たちも、神妙な表情だ。
傍にいる召喚獣が、慰めるようにすりよっているのは微笑ましいけれど。
「ここでは、人間のほうが異分子だったんですね」
膝を抱いたアリーゼの表情も、暗い。
まだちっちゃいのに、よく『異分子』なんてことば知ってるなあ、と。
妙なところに感心したの横、アティが慰めるように子供たちへ告げる。
「だいじょうぶですよ」
話し合っていけば、きっと判りあえます。
「うん。ファルゼンさんやアルディラさんも、協力してくれるって云ってくれたしね」
も、キュウマさんと話してきたんだよな?
にっこり笑うレックスに、大きく頷いてみせる。
「はい。そのうちまた、折をみて機会をつくってくださるそうですよ」
「あなた方って、もしかしなくても相当に無鉄砲なのね」
「否定はしないけど、なんでよ?」
「……否定してよ、ソノラ」
涙混じりのの訴えは、あっさり、ベルフラウ他一同に黙殺された。
アティとレックスが、いじけたふりして地面に“の”の字を書いている。
「余計に拒絶される、とか、一歩間違えばまた戦いになる、とか思わなかったのか、ってことです」
「んー……」
「そういうことですか」
ウィルのことばに、赤髪トリオは顔を見合わせて。
「本音を云うと、そういうの考えてなかった」
3人を代表したレックスのことばに、子供たちのみならず、一同ますます呆れ返る。
そんななか、スカーレルだけが肩を揺らして笑っていた。
「なんだかいい組み合わせねぇ、センセたちって」
「……あたしもですか?」
心外だ、と、顔に書いてみたものの、
「アナタが、一番この状況であっけらかんとしてる、って自覚ある?」
つん、との額をつついて、スカーレルは悪戯っぽく笑ってみせる。
その声はひどく小さくて、間近にいたにギリギリ聞こえるくらいだった。
内緒話でもあるまいし。
そうして、スカーレルが何をに告げたのか、たぶん問おうとしたのだろう。
くつろいだ笑みを浮かべたままのカイルが、口を開こうとして。
……瞬間。
夜の闇を突き抜けて、爆音が砂浜に轟いていた――
『!?』
どう考えても穏便な想像の出来ないそれに反応し、バッ、と一同立ち上がる。
「今の音は!?」
「集落の方ですッ!!」
ヤードの問いに、アティが音のしたほうを示して叫んだ。