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【果てしなき蒼】

- 深遠にまどろむもの -



 騒然と響く。
 怒号の交差。
 爆音が轟く。
 剣戟は絶えず。

 ……それはそれは、騒々しい茶番。

 暗がりにゆらりと蠢くそれが人の姿をしていたならば、眉宇を寄せる光景が見られたか。
 いや、たしかに元は人であったろう。
 出ずる源は、人の――であったろう。
 けれどもいまや、すでにそれは人に在らず。
 切り離され、独立し、凝って淀んだ深い妄執。
 同じく切り離されたとはいえ、まだ人の姿を保ち人の――として存在するものと、それが同一とは、誰に思いも寄らないだろう。
 否、眼前に示されたとて、そんなはずはないと否定するだろう。
 だが、否定こそがそれの望み。望みさえも否定しながら、否定こそがそれの名である。

 ――――ディエルゴ。

 遠き、古き、王国時代。
 そう称された何かのように、それもまた、人の目に触れればその名でもって呼ばわれるだろう。

 だが、今はまだ、そのときではなく。
 深い深い闇で、
 光一筋差さぬ深淵で、
 途絶えぬ怨嗟を紡ぎながら、

 未だまどろみに浸りつづける。――目覚めはけして、遠くないながらも。


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