泣いて疲れたか遭難して疲れたか襲われて疲れ果てたか。
おそらくその全部だろう。
ひとしきり泣き喚いたあと、ぐったりと、泥のように眠ってしまったウィルとナップを、はとりあえず、獣に見つからないような岩陰に寝かせる。
一人はが、一人はプニムが。
意外に力持ちさんだ、プニム。
「さーてさて」
「ピ?」
「ミュ?」
「ぷ?」
見下ろすは、ナップとウィルがかばってた召喚獣。
プニムと同じように、人懐っこくこちらを見上げて首を傾げている。
ちっちゃい召喚獣が3匹並んで、同じように首を傾げて見上げてくる様は……なんというか、レイム風に云うなら、萌えの一言。
などと考えたそれを、首ひとつ振って取り払う。
「このふたりが流れ着いたなら、レックスさんたちやアリーゼちゃんたちだって、流れ着いてておかしくなさそうだもんね」
だから、ちょっとその辺を探してみる。
「お留守番、お願いできるかな?」
何か変なのがきたら、この子たちを守ってほしいんだけど。
こっくり、3匹は頷く。
……癒し効果抜群だ。ちびっこ召喚獣ども。
それじゃ、とは立ち上がった。
だが、
「さん!」
唐突に背後から響いた声に、ぎょっ、と振り返る。
ざっざっざ、と、砂を散らして走ってくる足音がまず耳に入った。
振り向き終えた視界に、赤い髪のふたりが映った。
それから、彼らの背にそれぞれ背負われた女の子たちも。
「アティさん! レックスさん!」
「よかった、無事だったんだ……」
はあ、と。
アリーゼを背負ったレックスが、盛大な安堵のため息をこぼした。
ちなみに、アティが背負っているのはベルフラウ。ふたりとも、よく帽子が流されなかったものである。強力接着剤なのだろーか。
そうして、ふたりの後ろにちょこまかとついてきてたのが……
「あの、この子たちは?」
ちっちゃな召喚獣が、プラス2匹。トータル5匹。
新規加入の2匹は、霊界と鬼妖界出身らしい。これで四界全部のが揃ったことになるわけだ。
ああ、と彼らを見下ろして、アティが云う。
「この子たちが――」
視線で示すのは、ふたりで背負った女の子たち。
「たぶん、拾ったと思うんですけど。わたしたちが気づいたときには、ふたりで二匹をかばってたんです」
「かばってた?」
「うん。はぐれ……ブルージェルに襲われてて」
「そっちもですか!?」
きょとん。
レックスとアティの目が丸くなる。
「そっちも……って」
「じゃあ、さんたちも!?」
がばりとふたりが振り返るのは、岩陰で寝息を立ててる男の子ふたりだ。
そして、彼らを守るように傍に控える召喚獣たち。
「ケガは!?」
「ないですよ。ナップくんもウィルくんも、無事です」
たぶん疲れて寝てるだけだと。
答えてから、はふたりを手招いた。
傍の岩陰に同じく女の子たちを寝せるように云ってから、しげしげと召喚獣たちを見下ろす。
1+2+2=5。
さっきのブルージェルといい、ここにいるちびっこどもといい。
ここは、はぐれ召喚獣の宝庫なのだろーかと。
ありえないわけではない、とは思う。こんな、海のど真ん中にぽつねんとあるよーな島なら。
人の手がまず届かないだろう、小島なら。
なんらかの手段で流れ着いた召喚獣たちが、自分たちの営みを培っていても、不思議ではないだろう、とは――思うけれど。
「……何なんだろー、ね?」
バルレルでもいたら、なんか、的確な答えをくれたかなあ。
ひとりごちるを見上げて、プニムが、きょとんと首を傾げる。
その後ろでは、アティとレックスが、ついてきてた召喚獣2匹にさっきのよろしく彼らの傍にいるように頼んでいた。
出港時、あんなに青かった空は、盛大な曇天と嵐を経て、いまや茜色。
海に沈みかける太陽が、赤い髪した3人を、ただ真っ赤に染めていた。