走ること、数分もあったかどうか。
が走り出した頃には、先行したレックスたちと、待ち受けていたアズリアの会話はすでに開始されている。
走る合間に漏れ聞こえた会話はこうだ。
やはり、アズリアはレックスたちを討ち倒して魔剣を取り返すために、はるばる船へとやってきたんだとか。ちなみに、待機してたのは一時間もなかったらしい。
だけど、今となってはアズリアの要求に答えることは難しくなってしまった。
島の因縁もあるし、レックスとアティの気持ちもあるけど――そう。
ついさっき、当の魔剣、遺跡もろとも封印してきちゃってるんです。
……あ、レックスとアティ、素直にそれ白状してるし。
……あ、アズリアさん、怒った。そりゃそうだ。
何? 封印を解く? それはやめた方がいいと思うぞー。そりゃレックスたちも止めるわな、んなこと云われたらアズリアさん余計に怒りそうだけど。
っと、おお。云ってる傍から兵士たちが動き出した。
あー、やっぱ戦いになっちゃうのね。
会話の途中で場に飛び込むのも難だ、走るペースを落としたは、ちょうど、戦いの火蓋が切られた時点で砂浜に辿り着くことに成功した。
剣を抜き、早速かかってきた帝国兵を柄で殴り飛ばし――なんとなく、視線をめぐらせてその姿を探す。
イスラがいないのは、最初に見たときから判ってる。
探した相手は彼ではなく、もうひとりの因縁男。ビジュだ。
毎度毎度、帝国軍相手の戦闘では刃を合わせている付き合いもあることだし、は、今回自分から率先してビジュの前へと踊り出る。
「おっ?」
まさか自分から来るとは予想してなかったんだろうか、ビジュの細い目が、丸く見開かれた。
けれど、すぐにビジュは刺青を歪める。笑ったのだ。
「ヒヒヒッ、来やがったか」
「おうともですよ。決着つけますか」
が、その笑みは、
「あァ? ……ああ、云ってたな、そんなこと」
「は?」
どこかが――違っていた。
剣戟鳴り響くなか、召喚術が炸裂するなか、は肩の力が抜けるのを感じた。
相手の行動に対応出来るよう構えていた腕が、すとんと落下する。間抜けにも剣を落とすようなことはしなかったが、意気込んでいた分、拍子抜けした落差は大きい。
だが、ビジュは、がそんな隙を見せても、そこを突こうとしなかった。
やる気なさげに懐へ手を伸ばし、召喚石を取り出しながら、
「律儀なヤツだねェ……ヒッヒッヒ」
などと、人様を小バカにしたように笑い出す始末。
さすがに、これにはむっとした。
「何寝ぼけてるんですか。そっちから云いだしたんでしょ、旧王国関係者はぶっ潰すって」
「そうかいそうかい、ヒヒッ」
だが、ビジュの笑いは止まらない。
勝利を確信しているのではない、何か別の余裕を持ち、彼はそのために笑っている。
何か――そう。目の前の旧王国関係者を倒すということよりも、もっともっと美味しいエサを目の前にぶら下げられた獣のようだ。少なくとも、にはそう見えた。
「ビジュ! 真面目にやれ!」
奴らの剣がない今ならば勝利は確実だ、手を抜くな!
そうして、離れた場所にいるギャレオには、それこそ仲良く話し込んでいるように見えたのだろう。叱責が飛び、は自分に向けられたわけでもないそれに、小さく肩をすくめた。
が、当のビジュは「はっ」と鼻で笑っただけ。
「へいへい……副隊長殿は真面目ですねぇ」
そんな届きもしない、届かせるつもりもないセリフを吐いて、さあ来るかと構えたの前から――後退した。
「は?」
「テメエにかかずらってる暇はねえんだよ! 一人で勝手にいきがってな!」
「……」
ぽかーん、と、口をあけて、は、横手からかかってきた兵士の鳩尾を柄で抉った。ディスイズ条件反射。
それから、
「勝手ぬかしてんのはあんただこの目つきバノ、えっと、刺青―――――!!」
目つきバノッサさんモドキ、と、やはり判る者のいない悪態をつきかけ、あわてて修正しながら怒号。
だが、ビジュは返事もせずに、兵士たちの群れへ己を紛れ込ませている。おそらくは、あの群れを抜けて前に出たのだろう、一般兵士たちの軍服とはまた違う、白い上着はもはやちらとも見えなかった。
「うわぁ腹立つ! 何あれ新手の嫌がらせッ!?」
怒りに任せて地団太を踏むを、ギャレオと殴りあいながらやってきたカイルが、珍妙なものを見る目で眺めていたことに、叫ぶ当人が気づかない。
それどころか、「あそこだけ空気が違うような気がしねえか?」「……云わんでやるのが男だ」とかいう会話が繰り広げられいたことにも、気づかない。
気づかないまま、は、気を取り直すために深呼吸。
ここまで戦いを重ねて、戦場の真っ只中でのんきにすーはーやっている少女へ下手に手を出すと痛い目に遭うと知っている帝国兵たちは、触らぬ神になんとやら、そんな空気をかもし出して避けていく。
おかげで、は充分な時間をとって精神を落ち着けることが出来た。
「……ふっ」
無意味に歯を輝かせ、頭を数度左右に振る。それで仕上げ。
大人げなく、ナップたちに集団で襲いかかろうとしていた兵士たちを視界の端に留めると、そのまま身体の向きを変え、砂を蹴った。
「恨むなら、刺青を恨め有象無象! あたしのウサ晴らしに付き合ってくださりやがれませ!!」
ベルフラウとアリーゼを懸命に守る、ナップとウィル。
その間を抜け、白刃を振り上げていた兵士の後頭部に、ナイス踵落としをくらわせるや否や、啖呵をかますを見て。
兵士たちの何人かは、その勢いに思わず怯んだ。
兵士たちの何人かは、その緊張感のなさに愕然とした。
兵士たちの何人かは、それでも真面目に戦おうとした。
――そうして、子供たちは、
「五・七・五なのは、歯切れがよくて好感ですけれども」
「ビービビっ」
「季語が入っていませんね、減点です」
「ミュミュー」
「語尾もちょっと……物語のヒロインはもっとおしとやかじゃないとだめなのに」
「キュっ」
「そういうツッコミ冷静に入れてる場合か!?」
「ピ! ピプ、ピピー!」
……案外。案外、だ。
長兄ことナップが、一番まともな神経の持ち主なのかもしれない。
だが彼もまた、がぽつりと心のなかでつぶやいたそれを聞いていれば、間違いなくツッコミ側にまわったと思われる。
いや、あたし、どっちかていうとヒーロー?
遠く、サイジェントの地で。
オプテュスやマーン三兄弟や無色の派閥相手に“フラットの味方”と啖呵切りまくっていた姿を、なにしろ、この時代の誰も知らないのだから。
そんな彼女の望む平凡な人生が、本当に訪れるのかどうか。それもまた、誰も知らぬことだったりした。
……軍を抜けて随分と経つにも関らず、交える剣の重さはそう変わらなかった。
的確に狙いを定めて突きを繰り出しながら、きっと毎日鍛錬を怠ってなどいないだろう姉弟へ、皮肉めいた感嘆をアズリアは覚える。
その突きを、やはり最小限の力で弾きながら、アティが彼女へ呼びかけた。
「アズリア! お願いだから剣をひいて! これ以上戦っても、意味なんか……!」
「意味はある!!」
ない、と、最後まで紡がせず、それを遮った。
「貴様らを打ち倒し、遺跡にかけたという封印を解いて剣を奪還するという意味がな!」
「それを、俺たちが負けたからって島のみんなが許すわけないだろう!?」
アティを狙う矢を叩き落しながら、レックス。
一対一の戦いに横槍を入れぬあたり、実に律儀だ。
そういう意味では、アズリアの率いる兵士たちのほうが任務に忠実ではあるが、無作法だということか。……もっとも、この場合無作法でなければ勝利への展望も開けぬのだが。
勝利――そう、勝利。
望むのは和平でも痛み分けでもないのだ、剣を帝国に持ち帰る、そのための布石としてアズリアは勝利を望む。
ここまで失敗を重ねれば、いくらアズリアの生家であるレヴィノス家の後ろ盾があったとしても、軍法裁判及び降格は確定したようなもの。ならばせめて。
彼女自身の保身のためではなく、レヴィノス家に向けられるだろう汚名を少しでも減らすため、国への忠誠を示すため、魔剣は必要不可欠だった。
だから、彼女は、レックスの叫びにこう応じるのだ。
「島の住人に、この場の者ほど戦う力がないのは判っている!」
――それが、どんなに、
「云うことをきかせる手段など、いくらでもある……!」
己の望む、それに悖る行為だとしても。
そう、叫ばねばならぬほど、アズリアは――彼女の率いる部下たちもまた――追い詰められている。
己の失態だけではない。
部下である兵士たちのためにも――島に着いてから、日を追うごとに低下していく士気。眼前の相手が預り知らぬことではあるが、何度か脱走者も出たことがある。行く場所などないと判っているからか、彼らは連れ戻されることに抵抗はしなかったが、そんな自暴自棄の雰囲気は、どんどん強くなっていくのだ。
……そう難しくはない任務のはずだった。
あの港街からパスティスまでの海路、一対の魔剣を守り抜く。そうして、陸路の運搬を担当する、帝国陸戦隊へと引き渡す。
無色の派閥による襲撃が予想されなかったわけではないが、海に出てしまえばそれもほぼ不可能であるとの予想だった。
……それがどうだ。今の状況は。
絶海の孤島。
救援は望めぬ。
護衛対象は奪われ、封じられた。
奪い返そうと戦いを挑むも、すべて敗北を喫している。
部下たちの気持ちは判る、痛いほど。
不安を募らせているのは、自分も同じ。
だが、軍を率いる長として、そんな感情を表に出すわけにはいかない。
帝国海戦隊第六部隊隊長――その名には確かに栄光もあるが、その数倍もの義務も重圧も付随しているのだから。
「アズリア……!」
剣を合わせていたアティの顔が歪んだ。
まるで自分が泣き出しそうな、そんな表情だ。――羨ましい。今は、それが、ひどく羨ましい。
素直な彼女のこと、アズリアの発言に受けた衝撃を、そのまま出しただけなのだろう。それが出来ぬアズリアにとって、なお痛痒を与えているのだと気づかずに。
……そう。
戦いを忌避するということは、挑む相手を忌避すると同じなのだと、気づかずに。
「――紫電」
だが、今の状況において、アティのそれは致命的な隙。
アズリアは、それを見逃さない。見逃すわけには――いかない。
「絶華――――!!」
大きく引いた腕を見て、アティが、はっと身構えた。
だが遅い。そのときには、すでにアズリアは行動に入っている。常人の目には視認するのがやっとの速度で繰り出す無数の突き。それは確実に、アティの急所を狙い定めて発され――
「アティ……!」
――――そうなると、判っていた。
繰り出した突きのうち、確かな手応えがあったのは二、三。だが、その手応えは狙い定めたアティの身体からではない。
まるで寝癖のようだと、学生時代にからかった赤い髪が――その持ち主が、アズリアとアティの間に身を割り入れていたからだ。当然のように、攻撃を受けたのはその人物。
「レックス!?」
弟の行動を思いがけないもののように、アティが叫んだ。
何を驚いているのか、立場が逆なら自分もそうするのだろうに。――頭のどこか、冷めた部分でアズリアは思う。
「先生っ!」
遠くから、こちらを見咎めた子供の声。たしか、ふたりが面倒を見ている生徒だとか。
紫の召喚石、それを高く掲げようとしたツインテールの少女を、レックスは、手のひらを突き出して留めた。
「だいじょうぶ、かすり傷だから」
叫ぶわけでもなく、よく通る、聞く者の耳に心地好い声で彼は云う。その確りとした仕草に、少女は、少しだけ間をおいて頷いた。
その傍らに視線を転じ、アズリアは気まずい思いを味わう。
――眼前のふたつとは色違いの赤い髪が、そこにあった。
ちらりとだけこちらを見た、翠の双眸。特に、怒りをたたえていたわけでもないの目に、アズリアは、僅かに身を強張らせる。
“どうも”と。敵である彼女に向けて、が目礼したからだ。
あいつもまた……レックスたちと同じだというのか。ふつ、と沸きかけた憤りは、けれどすぐに沈静。そうしている間にも、は、襲ってくる兵士たちを遠慮なく返り討ちにしているから。その足元の、なにやら青い生き物が放り投げている岩石を見るに至っては、ちょっと本気で部下の命を心配したが。
……だからこそ。
目の前の……傷を負ったにも関らず、怒りも見せずにいるレックスとアティへの憤りが、なおさら大きくなるのだけれど。
「アズリア」、その当人が、彼女の名を呼んだ。「話を聞いてほしいんだ。話をしよう」
未だ甘い幻想を、そうして彼女へ紡ぐ。
微笑みながら。
痛みを押し隠していることさえ、上手に隠しながら。
笑いながら――あのころと、なんら変わらぬその表情で。
「……出来る、もの」、なら、とは云わない。「――か」
唇を噛みしめながら、アズリアはつぶやいた。
輝きかけた蒼い双眸が、また曇る。そこに叩きつけた。
「出来るものか! そんなことが! 誇りある帝国海戦隊が、海賊どもの前に膝を屈するなど!!」
決着もつけようとせず、戦いから逃げつづける、そんな相手に歩み寄るなど。
「出来る、わけが――――」
ない。
ないのだ。
そのアズリアの叫びに、何を見たか。
二対の蒼は瞠目し、彼らは負けじと声を張り上げる。
「そんなこと……そんなことない! 俺たちは、アズリアに負けろって云ってるんじゃない!」
「ただ、みんなが幸せになれる方法を探したいんです!」
その“みんな”には、アズリアを初めとする帝国海軍の者たちも入っているのだと。
叫ばずとも、その双眸が告げていた。
その蒼に気を奪われていたアズリアは、気づかなかった。
もうひとりの赤い髪の主、こと、がそれを聞いて、僅かに眉をしかめていたことに。
それは、天啓のように閃いた。
スカーレルが、以前から暗に示していたこと。
子供たちが、誰もが、薄々と感じていたこと。
そして――が感じていた、決定的な違和感の解だった。
「……そうか」
つぶやく。
「ぷい?」
呑気に岩石を投げていたプニムが、つぶやきを拾ってを見上げた。
そして、場所が場所でなければ、今すぐにでも頭抱えて蹲りそうな少女の表情を目の当たりにして、思わずその場に硬直してしまったのである。
が、そんな絶好の攻撃チャンスであるにも関らず、帝国軍兵士の誰も、そのひとりと一匹へ攻撃を仕掛けようとしなかった。
さもありなん。
そのころにはすでに、帝国海戦隊の面々は、殆どが彼ら云うところの海賊どもの手によって、無力化されていたからである。
……いつか、スカーレルとヤードと、話した。
レックスとアティは、自分たちの命を軽んじている節がある、と。
それが、「みんなが幸せになる方法」に集約されている。
――――みんなで幸せになるために、
そう云って、走り抜けた少女がいた。
――――みんなが幸せになるために、
そう云って、走り行くふたりがいる。
差異は、文字にするなら、たった一文字。
けれど両者の間にあるのは、決定的に埋められぬ溝だ……
――そうして、起こる。
――何の先触れもなく、それは起こる。
いや、あったのかもしれない。
けれど、それは、他の誰にも感じられぬまま。
ふたつの赤は、白へと変じた。
眠らせたはずの碧が、ふたりの手に握られた。
「……、え」
「あ……れ」
まるで、テレビのチャンネルを切り替えたよう。
いつもある光さえなく、それこそ、ほんの一瞬、瞬きをするだけの時間もあったかどうか。
レックスとアティは、その姿になっていた。
険を増すはずの、碧に染まった双眸も、このときばかりは驚愕に丸く見開かれる。口をぱくぱくとさせて、ふたりは、己とその隣の姿を、互いの手に絡みつく碧の賢帝を凝視した。
驚愕は、ふたりだけではない。
共に遺跡へと向かい、確かに封印の現場を目撃した護人たち、海賊たち、子供たちもまた、呆然と、白いふたりを穴の空くほど見つめている。
だが、何度見ても、そこにある色は赤ではなくて白だった。手は、空ではなく剣に繋がっていた。
……誰もが、驚愕に意識を染め上げる。
けれど、それ以上の感情に、心をひたした者がいる。
「封印したと云ったな」
冴え冴えとした、底冷えのする声で、アズリアがそう云った。
黒い双眸に映るのは、白く化した姉弟の姿だ。宿る感情は、ただ、怒り。
「それは口先だけだったということか!」
呆然としていた一行の意識を、その怒声は揺さぶり起こす。
誰よりも思考を空回りさせていただろう、レックスとアティも例外ではない。
「ち、違います! 封印はたしかに……!」
アティが云うが、その姿では説得力も何もあったものではない。
「黙れ!」
これ以上聞く耳は持たないと、アズリアはそれを遮った。
感情のままに怒鳴りつけながらも、彼女の目は冷静に、その場一帯を廻っていた。まだ戦えるであろう部下の数を把握すると、アズリアは、地面に向けていた切っ先を再び持ち上げる。
「アズリア!」
「総員――」
レックスの叫びを打ち消して、アズリアが号令を出そうとした――そのときだった。
これまで明るかった一帯が、急に翳る。
それこそ、ほんの一瞬にして。
「え?」
つられるように頭上を見上げた数名が、さっきまでの晴天が嘘のように、重々しい暗雲に覆われた空を見て目を丸くした。
つづいて、足元が揺れた。
ゆらり、なんてかわいらしいものではない。
ぐらり、ぐらぐら、ゴオオォォォ……地面の下で何か怪獣でも暴れていそうな、そんな震動。
「う、わ……っ!?」
すでに地面に伏していた帝国兵たちはいざ知らず、立っていた全員、姿勢を保てずにバランスを崩した。
あわや倒れることは避けたものの、二本の足で立ちつづけることは出来ず、膝をつき、手のひらをついて、ようやく身体を支えられるほどの大きな鳴動。
けれど、揺れもそう長くは続かなかった。時間にすればせいぜい数秒にして、大地は静けさを取り戻す。
それが幸いといえば幸いだった……が。
ほんの一瞬後。
そんな安堵を打ち消すかのように、それは顕現したのだ。
『――――』
既視感。
護人たちはひとりの例外なく、その光景に既視感を覚えていた。
それはあの日、――そう、すべての始まりともいえる嵐の日。
海から空へと立ち上った、白い、真白い、焔の柱。
天へも届かんとばかりに在った、それを。
ファリエルも、アルディラも、ヤッファも、キュウマも、顕現したそれを見た瞬間、脳裏に思い描いていた。
なぜならば。
たった今、島のいずこかを基点として顕れたそれは。
――夕陽のように、血のように。赤く、紅に輝く光の柱であったからだ――