ともあれ、航行してない海賊船は、普段よりずっと早い朝を迎えることになった。
成人男性と成人女性を運搬するのは難しいと感じたが、こうなりゃ一蓮托生よ、と、鍋をおたまで打ち鳴らしながら廊下を練り歩いて全員叩き起こしたせいだ。
そんなことしてる暇があるなら必要な奴だけとっとと起こせよ、とカイルにつっこまれながらも無事任務達成。
ばたばたと自室に運ばれて数時間後、目を覚ましたふたりは、それを聞いて申し訳なさそうに笑った。
「ごめんごめん。さすがにちょっと堪えたみたいだ」
帰って来たらの後ろ姿が見えてさ、ほっとしたら、気が抜けたんだと思う。
「ちょっと、かよ」
ため息混じりにナップが云うが、もはや笑って躱されるのが目に見えているせいか、それ以上の追及はしない。
「徹夜が堪えるなんて……もう年なんでしょうか」
寂しそうにつぶやくアティの背を、「それじゃアタシなんてどうなるのよ」とスカーレルが軽く叩く。
懸命な一同は、誰も、そんなおニイさんにつっこまなかった。
性別のこと同様、たぶん、年を聞いてもダーツが飛ぶ。いつかがそうだったように。
ははは、と生まれた生ぬるい笑みのなか、それでも、レックスたちのそれが単なる睡眠不足だとわかったおかげか、ほっとした空気が混じりだした。
早々と眠ったわりに、船にいた一行のなかにも欠伸をする者が多いのは、やはり眠りが浅かったせいだろう。
――みんな、結局気がかりだったのだ。自分たちがついていっても護人たちの口は重かろう、と、自粛はしたものの、またレックスたちに負担をかけることになってしまった申し訳なさや、その後彼らが決めるだろう、遺跡の処遇の如何やが。
そして、ウィルが口火を切った。
「……話は、されてきたんですね?」
昨夜から、そして、帰ってきても、寝こけるわ朝食を食べなきゃだわで、さんざ焦らされた分、彼はいささか早口にそう告げる。
実際、もう日はそこそこ高く昇っているし、船の外ではいつもと変わらぬ島の日々が営まれているはずだった。
差し込む光は、窓辺のベッドに腰かけるレックスたちを照らし、その輪郭を淡く縁どっていた。赤い髪はいつも以上に鮮やかで、日に透けた部分は何かの宝石めいている。
「……ああ」
穏やかに微笑んで、レックスが頷いた。
「お話、聞いてきました」
目を細めて、アティが云った。
アルディラ。
ファリエル。
ヤッファ。
キュウマ。
――この島の成り立ちから深く関る護人たち。
長く一晩をかけて、彼らから多くのことばを受け取ってきたふたりは、そうして、息を詰まらせて見守る一行に告げた。
決めたよ、と。
「遺跡は、封印します」 ――と。