そうして、ジャキーニ一家VSカイル一家と仲間たちの再戦の結果はというと。
「なぜじゃっ、なぜ勝てんのじゃああぁぁぁぁ!!」
「……あんたたち、根本的に弱いじゃん」
以上の台詞を見ても判るとおり、カイル一家と仲間たちの圧勝という形で、幕を閉じていた。
召喚術を用いても勝てぬことを嘆くジャキーニに、とどめとでも云うべきソノラのツッコミが冴え渡る。
ぐふ、と崩れ落ちた反乱者ことおヒゲの船長さんを、未だ頭痛のおさまらないらしいヤッファが詰問。
「で。なんだって、いきなりこんなことをしたんだ?」
「フン! あの戦いの結果が気に入らんかったからに決まっとろうが! 罰でもなんでもこいじゃ!」
と、盛大に啖呵を切った後、ジャキーニは声の調子を落として付け加える。
「――おう、そうじゃ。手下どもは、ワシの命令に従っただけじゃきに。罰を受けるのは、ワシひとりじゃからな」
「あ、あんさん!!」
そんなジャキーニを見て、悲鳴をあげるオウキーニ。軽く頷くヤッファ。
まあ、ヤッファにしても、ユクレス村には一部の地面に穴ぽこが開いただけで人的被害はないし、大砲の弾の撤去作業といくらかの罰を与えて終わるつもりらしいし。
マルルゥは、これから畑の仕事で「びしばし行くですよー!」とのことだそうだ。彼女の“びしばし”ってどんなんだ。
が、オウキーニは義兄の発案が気に入らないらしい。後ろ手に縛られた体勢のまま、ジャキーニとヤッファの間に身体を割りいれて叫ぶこと曰く、
「ニイさんだけに罪は被せられません! そもそも、ニイさんかてあの小僧にたぶらかされただけやさかい……!!」
「……小僧?」
「ええい、黙れオウキーニ! ワシはあんな奴の云いなりになんぞなっとらん! 決めて行動したのはワシじゃ!!」
「けど、あいつが来いへんかったら、ニイさんもこんなふんぎりはつけまへんでしたろ!?」
「いやちょっと待て」
怒鳴り合いを始めようとしたジャキーニとオウキーニの間に、今度はカイルが割って入った。
両腕を使って義兄弟を押しのけ、オウキーニを振り返る。
「小僧って、誰のことだ?」
「こらカイル!」
「情報料だ。それで手下どもの強制労働は免除してやるよ」
元々、腹をたててるのは、ちびって云われたマルルゥくらいだしな。
「……」
ぐ、と、ひとつうめいてジャキーニは口を閉ざした。
そんな兄をちらりと見て、オウキーニがカイルの問いに答える。
なんとなく、
「……イスラや」
その名前が出るだろうってことは、予想していたけれど。
「…………」
改めて云われると、やっぱり、なんだかなあ。
複雑な表情で顔を見合わせる数名を不安そうに眺めて、オウキーニはことばを続ける。
「本当は、こないだの火事騒ぎに乗じて、ウチらも反乱を起こさないかって誘われとったんです」
「ふん。人に云われるままに動くなんざ、海賊の名折れじゃい」
「……で、それでもオレたちに一泡吹かせてはやりたくて、今日実行したわけか」
「はい」
「召喚術の入れ知恵したのも、じゃあ」
「そうじゃ。負けたんなら、その力を手に入れればいい、とな」
「……」
なんとも表現しづらい雰囲気が、一行の周囲に満ちた。
顔を見合わせる者、ため息をつく者、そのどれもに共通した雰囲気。居心地の悪い沈黙が、しばらくその場を支配して――
「……イスラも、人を見る目がないな」
「うん。こんな奴に声かけるなんてね」
雰囲気を代表したカイルとソノラのつぶやきが、ユクレス村人質篭城事件の締めくくりとなったのだった。
そりゃどういう意味じゃー! と叫ぶジャキーニの声が、ひと時の間、村に木霊していたとか。