飛び込んできた生き物を、アルディラは驚き半分で歓迎した。
「あら……いらっしゃい。先日はありがとう」
いつぞ。電波塔で倒れていた彼女を発見し、クノンに知らせたのがこのプニムなのだ。放置されていたとしても目は覚めただろうが、健康のためにはよろしくない。
遊びにきてくれていたタイミングのよさに、アルディラは本当に感謝している。
そうして、挨拶に前述の台詞が加わったわけだ。
「ぷ!」
気にするな、と首を振って、制御パネルの前に腰かける彼女の傍に、プニムはぽよぽよと跳ねてくる。
機械の上に乗ってはいけないと、ちゃんと判っているのだろう。
足元で立ち止まったプニムを、アルディラは両手を使って抱き上げた。
「どうしたの? もう、あと何時間かで日が沈むのだけど」
また、いつかみたいに、あなたの誓約相手に怒られてしまうわよ。
やわらかな手触りを楽しみながら、そう云ってみたけれど、プニムは耳で大きな丸をつくってかぶりを振る。問題はない、ということらしい。
それから、傍のディスプレイに映し出されている、ラトリクスの全図。その一角を耳で示した。スクラップ置場の位置。つづいて己の隣を一度指し、再びスクラップ置場を指した。
「……ああ、がそこに行っているのね?」
思考に数秒を費やして、アルディラはプニムのジェスチャーを理解する。
「ぷ」
「荷物の運搬かしら? 手伝わなくていいの?」
「ぷぅ」
「違うの? ……何の用なのかしら、あんなところに」
「ぷ……」
「いえ、別に個人の自由だと思うけど。ところで、終わったら迎えに来るのかしら?」
「ぷ!」
「そう。じゃあ、少しゆっくりして行きなさいな。クノンも呼んで――あら」
うにょうにょジェスチャーする青い生き物とひとしきり会話したあと立ち上がり、アルディラは、訪れたもうひとつの人影に目を丸くした。
「どうしたの、レックス」
「――あ、ええと。こんにちは、アルディラ」
例によって学校帰りらしい。大きな袋を背中に担いだレックスが、はにかんだ笑みを浮かべて手をあげた。
「実は、明日休みをもらったんだけどさ。――その、よかったら……」
「……ぷ」
プニムが、頭の上で歪な円をつくって左右に揺れた。