がーらごろごろ。
アルディラの提案を受け入れたは、プニムといっしょに、借り出した手押し車を転がしながら、スクラップ置場にやってきた。
ちなみ、ファルゼンとフレイズはあのまま退去。アルディラとクノンは、一度念入りに島をスキャンしてみる、と、中央管理施設に戻っている。
そんな大きいものはないというし、持ち帰れる分だけでいいから、とのことだし、見てみるだけ見てみよう、と、一人と一匹は寄り道することに決めたのだ。
「――わあ」
辿り着いたスクラップ置場で、は思わず声をあげていた。
なんというか、これはすごい。
大小さまざまな機械(の残骸)が、天井のないドームのような囲いのなかに、どさどさと無造作に積み上げられている。へし折れた金属柱や、もはや何の部品だったのかわからない鉄板。随分昔に棄てられたんだろう隅っこのやつなんか、元の色がわからないくらい赤茶けた錆に覆われていた。と思えば、傍に転がってる金属塊は何故かぴかぴかのままである。まだ日が浅いのか、それとも特殊金属なのか。
……向こうの世界の廃車置場だって、こうまで混沌とはしていまい。
ひとしきり風景を眺めたあと、入り口脇に積まれた、比較的きれいで整った部品だとか金属だかの山に視線を止めて、はプニムを促した。
「アルディラさんが云ってたの、あれかな?」
「ぷい、ぷっ」
そうそう、とプニムは頭を上下させた。
ラトリクスの護人さん曰く、プニムにはこの手伝いもやってもらったらしい。ノイズとやらの軽減、そしてこの部品調達。
知らないところでがんばってたんだね、プニム。えらすぎる。
「それじゃあ、いくつか適当に持っていこうか」
腕まくりして云うに、プニムも元気に飛び跳ね、
「もし、そこのお方」
……
あれ?
は、まじまじとプニムを見下ろした。
応えるように、くりっとしたつぶらな瞳で、プニムはを見上げ、
「もしもーし! そこなふたつの生命反応な方々!!」
「……プニム、しゃべれるようになったの?」
「――ぷ?」
首を傾げた。
フ、とは遠い目になり立ち上がる。
「ってそんなわけないよね。……えーと、どちら様ですかー?」
一度は見渡した瓦礫の山に、再び視線をめぐらせる。
「ううう……っ、ナチュラルにシカトされたかと思ったであります……ッ!」
誰何に応え、ちょっと離れた瓦礫の下から、嘆き節が聞こえてきた。
なんだなんだ、と、目を丸くして、とプニムは声の聞こえると思しき場所へ小走りに近づいた。
ちょっと小高く積みあがってる瓦礫の傍まで着くと、またしても声。
「ここです、ここ! この瓦礫の下であります!」
「……象が踏んでも壊れない筆箱って、昔あったっけ……」
しょうもないことをつぶやいて、はその場にしゃがみこんだ。
まさかと思うが、どうもこの声の主、間違って瓦礫の下に埋もれちゃったらしい。うまいこと隙間が出来たか何かで、どうにか傷は負わずに済んだんだろう。
口の横に手のひらを添えて、まずお伺い。
「発掘しろってことー!?」
「そうであります! お願いしますであります!!」
喜色も露なその声に、はプニムを振り返った。
「いける?」
「ぷ!」
まかせとけ! と力こぶ作って、プニムは勇ましく瓦礫撤去にとりかかった。
もいくらか手伝ったものの、殆どプニムだけでやったようなものだ。
スクラップばかりだから遠慮がないのか、掴んでは投げ掴んでは投げ……そうしてひとしきり、スクラップ置場には、投げられた金属が風を切る音とか、落ちてたてた爆音とかが、けたたましく鳴り響き。
――結果――所要時間十数分で、声の主はたちの前にお目見えしたのである。