――そうして、太陽がその姿をあますところなく空に見せたころ。
「んー」
宿から一歩出た往来で、は大きく伸びをしていた。
朝ご飯もばっちり頂いて、しかも宿泊代は前払いしてあったので、ちーとも懐が痛まなかった爽快感。
いやいや、イスラさんには本当に感謝してますけどね。
それにしたって、あらゆる方々に迷惑をかけている気がしないでもない。
……無事に元の時間に戻れたら、なんとか帝国に入って探して、恩返しでもするべきでしょうか。
するべきだろうな。
だけどそれはまだ、先の話。
「明日まで何しよーかなー」
とりあえず、ここでは知り合いに逢う心配が今のところ、ない。
そのことだけは、少しだけ気が楽。
しばし周囲を眺めて、は、「うん」とつぶやいた。
「街の探検しよー、っと」
昨日は本当にざっとあちこちまわっただけだったし、今日はついでに旅のしたくも整えたい。
それにほら。
時代のズレはあるけれど、せっかく訪れた帝国領。
帰ったときに、土産話のひとつやふたつも、してやりたいものじゃないか。
見上げた空は上天気。
潮風が心地好く頬をなでていく。
もう一度息を大きく吸って、は、視線を前に戻した。
そうそう。悩んでたってしょうがない。
動かなきゃ何も始まらない。
バルレルには後で、誠心誠意謝るとして。
とりあえず、自分のことをどうにかしなきゃ。
……さて、
「それじゃあ、行きますかっ!」