に何か文句を云おうとしたアズリアの表情は、だが、その足元を見て別の意味でひきつった。そして凍りついた。
鋭さのある目は丸く瞠目、視線はその一点に縫いつけられたように。
その一点は、云うまでもあるまい。
何故か地面に倒れ伏す、イスラ・レディンヌである――!
「レヴィノスだ、レヴィノス!!」
地の文につっこまんと、間違えてる誰かにつっこんでやってください。
閑話休題。
閑話とは、本筋に関係ない話という意味である。つまり、今のツッコミは本来の展開において、判定:無効。
閑話なのか!? とか叫ぶ暇があったら駆け寄れや、と天から声がしたのかどうか。
アズリアは、十数秒ほどの硬直のあと、搾り出すような声をあげた。
「……イス、ラ……?」
ぴくり、と。
伏していた、イスラの肩が震えた。
そうして、ゆっくりとイスラは身を起こす。露になった彼の顔を見て、アズリアは地面を蹴った。
「イスラ……! イスラ、無事だったんだな!?」
いつか見せた、冷徹な指揮官の表情はかけらもない。
そこにいたのは、ただ、血の繋がった家族を案じる、ひとりの女性だった。
地面に跪いて、真っ直ぐに己を覗き込む女性を、イスラもまたまじまじと見返し……ゆっくりと、その唇が持ち上げられた。
「……あなた、誰ですか?」
「――――」
「――――」
世界、凍結。