TOP


第60夜【十三夜】 六
lll あなた以外要らない lll




 光に混じって、問いかけが、ひとつ。




「たったひとつは、何ですか?」

「……貴女だけ……」




 光に混じって、答えが、ひとつ。




「やっと、思い出してくれた?」
「……ええ……ええ、そうでしたね」

 ひどく嬉しそうなの……彼女の声に重なって、銀の悪魔の声がした。





「私には貴女だけ」


 望みはただ、ひとつだけだった。

 最初に願ったただひとつが叶うなら、もう、何も要らなかった。
 そう。
 壊す行為も、支配する行為も。

 ――なにも、なにも。要らない。







「……貴女だけが、在ればいい……」

 なにもいらない。だれもいらない。
 いまかたわらにある、あなたいがいには、もう――なにものさえも。







  ――あなたいがい、だれも、みちづれなどいらない――



←第60夜【十三夜】 伍  - TOP -  第60夜【十三夜】 七→