TOP


第60夜【十三夜】 四
lll あしたにつづくみち lll




 さあ。
 最後の鍵は、そこにある。

 目の前に、道を拓く扉がある。


 ゆっくりと目を閉じた。
 意識は己の奥深くに集める。彼女ではなく、自分だけではなく。
 ふたりが、ここに、いなければいけない。
 ひとつのからだにふたつのこころ。
 眠り続けたそのひとといっしょに、……行こう。彼が待っている。
 ひとつのうつわにふたつのたましい。
 同時に目を覚ましたら、身体が壊れるのが先か、精神が崩壊するのが先か?
 それがどれほどの危険を伴うか、判ってはいるけれど。


 ――リン、と、どこかで銀のなくこえがする。

 ――りぃん、と、どこかで銀の鳴る音がする。


 今。そうしなければ、この扉が開かないことを、知っていた。きっと、いつか。いつも。



 ここに、すべて鍵は揃う。

 扉を開けよう。――あしたにつづく、道へ踏み出そう。

 みんなでいっしょに。



 ……みんなが、みんなで。しあわせに、なるために――


←第60夜【十三夜】 参  - TOP -  第60夜【十三夜】 伍→