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第52夜 九
lll 最後の嵐の前に lll




 動き出す時は、もうすぐそこに。
 そうして、歌をつむごうか。
 今度こそ、真実を謳おうか。

 遠い遠い昔の話、終わらぬ歌と物語。

 ――その結末が、たとえ、いかなるものであれ。



 それぞれが決意した夜は明け、しばらくは、静かな日々が過ぎた。
 だけどそれは嵐の前触れ。
 それをわかっているから、誰も緊張を解かずにいた。
 日々の生活、食事、鍛錬。
 馴染んだそれを繰り返すふとした合間、見えぬ糸がぎりぎりまで、張り詰めていることに気づきながら。


 そうして、その報せは唐突に届く。

「総帥、お呼びですか?」
「ああ。彼らに伝えてくれ」

 ――悪魔たちの軍勢が、トライドラから動き出した、と。


 最後の嵐がこれから起こる。
 その嵐がおさまったとき、地は固まるか崩れるか。それとも別の様相を見せるか。

 なんにせよ。
 これから歩きだす君たちに、最後の問いを投げかけよう。


 さあ。終焉を迎える覚悟はいいね?


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