TOP


第52夜 八
lll 闇に淀む決断 lll




 星の光があますところなく降り注ぐ、リィンバウムの一端に。
 光など要らぬと云いたげな、闇がどよりとわだかまる。
 そのうちのひとつが、ゆらり、揺らめいた。
「――手はずは宜しいですね?」
「はッ」
「かしこまりました」
 悪魔王たる主のことばに、悪魔たちは各々頷く。
「では、任せましたよ」
 私はあの場所で、美味なるそれが集うのを、心待ちにしていますから。
 そう告げて、闇のひとつがその場から消えた。
 同時に。
 3人の悪魔たちは、ゆっくりと顔を上げ、息をつく。
 かつてに向かい合っていたときのように人の姿をとった彼らは、それでもその形を保ったまま、自然に闇へ溶け込んでいた。
 ビーニャが、小さく身震いする。
「……レイム様、最近恐くナイ?」
「さて……それも無理はありますまいな。もう、定めてしまわれたのですから」
 主は決めた。
 道を繰り返そうと。
 たったひとつを手に入れるために、他のすべてを滅ぼそうと。
 そしてまた。
 あの結末も――繰り返す?

 嘆き。
 悔やんだ。

 喪失。慟哭。絶望。怨嗟。……また繰り返すのですか?

 だがそれは、形にすれば即座に不興を買うのみだ。
 わだかまる問いも、凝る疑念も押し包み、三悪魔はほくそえむ。
「何にせよ、我々は主の望むままに動くのみだがな……カカカッ」
「そォね。レイム様のお望みのままに――キャハハッ、せっかくだしィ、いっぱい壊して楽しんじゃおっと」
「クククッ……また我が手駒を増やすことができますなァ?」



 闇の中、笑い声だけがただ響いていた――


←第52夜 七  - TOP -  第52夜 九→