ふと寒気を覚えて目を覚ましたのは、まだ暗いうちのことだった。とはいえ、たぶん、もう少ししたら東の空が白むだろうくらいの時間。
眠りが浅くなっていたせいか、身体にだるさは覚えない。意識はちょっとぼんやりだけど、このまま起きてしまっても、日中欠伸連発なんてことにはならないだろう。
ふと、他の人たちが寝息を立てていることを確認して、闇と静寂に包まれた窓を見やった。
薄い布のカーテンのみ閉められた先には、月明かりさえもなく――新月なのだから当然か。
コツッ……
「?」
ぼーっと、向けていた意識で、その音をとらえて。
ごしごしと目をこすり、改めて、音のした方を見る。
コツッ……コツッ……
闇を縫い、飛来する物体が、カーテン越しに見えた。
小さな黒い塊――小石? 木の実?
コツッ……コツッ……
風で飛んできたのかと、しばらく見ていたけれど、どうやら、人為的なもののようだった。かつ、ここの部屋の住人に用事らしい。
間隔をおいて、規則的に、その石だか実だかは、は投げられているようだ。
「……誰……?」
こんな夜中に何してるんだと思いながら、ベッドから滑り降りて窓辺に向かった。
普段なら。もう少し頭がはっきりしていたなら。
今自分の寝ていた部屋は2階であることや、仲間が用があるのなら扉からくればいいということに、思い至ったかもしれない。
警戒できていたかもしれない。
コツッ……コツッ……
鳴りつづける音。
カーテンを引きあけて、窓の鉤を外した。
それから、寝てる人たち起こしてはまずいと、音を立てないようにゆっくりと押し開けて――そこには、
手すりにゆらりと身を預け、少女の姿した闇がいた。
「コンバンワ、ちゃん」
「――ビーニャッ……」
ぶわぁ、と、闇が広がって。
発したことばごと、を包んで呑みこんだ。