先だって訪れた際にルウが書き写していた、例の『禁断の知を』どうのこうのの石版の写しの解読を、ギブソンたちに依頼して、ひとり増えた見送りに手を振って、さあ改めて出発だ。
目的地はすでに決まっている。
ファナン、そして禁忌の森。
街道の分かれ道までアヤたちがレヴァティーンとかゲルニカとかで運んでくれたおかげで、えらく早く辿り着いてしまった。
「いいなー便利だなーすごいなー」
無邪気に尊敬のまなざしを向けるトリスに、照れくさそうな顔をしている誓約者たち。
エルゴの王というだけでなく、同じ召喚師として高位の術を操る人を目の前にしたうれしさが、彼女の全身から伝わって来るせいだろう。
その感動は、マグナもルウも同様。
ネスティもなんでもなさそうな顔をしつつ、しっかり呪文とか動作、チェック入れてたし。
そんな憧れの召喚術コースはさておいて。
街道の要所要所に備え付けられている休憩所を丸々ひとつ占領した一行は、さっそくとばかり、作戦会議。
作戦というのもおこがましいほど、大味なモノではあるけれど。
「じゃ、俺たちは禁忌の森に行って召喚兵器と機械遺跡を封印してくるから――」
「その間に、こっちはファナンでデグレアの侵攻を食い止める加勢をしてればいいのよね」
以上。
会議てほどでもありゃしない。
現にバノッサなぞ、ンなもん一々確認してんじゃねぇ無駄だろうがとかブツブツ云っている。
「健闘を祈るよ」
「生きて帰って来い」
ファナン担当組から、禁忌の森担当組へ。
「戻ってきたらファナンがなくなってたとか嫌だからな」
「無理しないでね、相手は軍隊なんだから」
禁忌の森担当組から、ファナン担当組へ。
それぞれ激励と発破をかけあって。
「よし、行こう!」
晴れ渡った青空の下、最後にその声が響き渡った。