今日も、心地いい風がサイジェントの街を吹き抜けていく。
その街はずれ、俗に南スラムと呼ばれている地区から真っ直ぐに歩いて、崩れかけている城壁を抜けた先の荒野に、数人の人々が集まっていた。
「じゃあ、ミモザさんやギブソンさんによろしく伝えてくださいね」
「ああ、判った」
召喚に応じてやってきた、霊界サプレスの高次生物――レヴァティーンの背に乗ったトウヤが、地面に立ってこちらを仰ぎ見るアヤに頷いてみせる。
トウヤの後ろにはカシス。そのまた後ろにはナツミとキール。
対してアヤの隣にはソルが並び、少し後ろに下がった場所でハヤトとクラレットが同じように彼らを見上げていた。
「くれぐれも、レヴァティーンは王都から離れた場所で下りてくれよ。こんなので街に入ったら、大騒ぎになる」
「王都には蒼の派閥の本部があるわ。よけいな波風は立てないにこしたことはありませんから」
ソルとクラレットが揃ってそう云って、キールとカシスが揃って頷いた。
「訊いてくるのは、こないだの夜の魔力と、耳鳴りみたいな音のコトだよね?」
「ああ。ついでに無線が不調な理由も頼む」
「それは僕がみてくるよ」
「頼んだぞ、トウヤ」
そんなふうに、こまごまとした会話を交わすこと、しばし。
やがて、居残り組は飛び立つ勢いに巻き込まれぬよう、出発組からやや離れた場所へ移動した。
ざあ、と、ひときわ強い風が吹く。
その風に乗って、レヴァティーンは舞い上がった。