「ふざけるなーっ!! あれはあたしたちの仲間なんだってば……ッ!!」
げしッ
「……あいたたた」
「何してるんですかぁぁ」
思いっきり壁を蹴っ飛ばしたものの、強度は壁の方が強い。当たり前だが。
逆にうずくまったに、レシィが泣きながらしがみつく。慰めてくれてるんだろうか。少しだけゆとりを取り戻そうとした瞬間、続けて発された『声』で、また気持ちがささくれだつ。
『問題ありません。迎撃システムにより、侵入者は自動的に排除されます』
「排除するなあぁぁぁぁッ!!」
レシィを押しのけ立ち上がり、どことも知れぬ発生源へ向けて怒鳴りつける。こんころ転がる緑色の少年を視界の端に入れたまま。
「ていうか、少しは人の話を聞け! 外の人たちは、あたしたちの仲間だって云ってるでしょう!!」
機械なんだからしょうがないけど、どこまでも、徹頭徹尾、冷静というか感情のない声で云われ、逆に頭が大沸騰するありさまだった。
そもそも問題ありませんどころか大有りだッ!
そしてそうこうしている間にも、スクリーンのなかでは、つまり外では召喚兵器にみんなが苦戦している姿が映し出されていた。
並の敵なら退けれるだけの力を持っているはずだけど、初めて目にする敵の姿に、勝手が判らず戸惑っているようだ。
それに加えて、いくら傷つけられても勢いの衰えないことが、よけいに困惑に拍車をかけている。
「お願い! 今すぐ攻撃をやめさせてッ!!」
ガンガンと、目の前の装置を両手で叩きながらトリスが叫ぶ。
けれど返ってくる答えは、実に否定的。
『不可能です。ひとたび起動した召喚兵器は、命令を完遂するまで絶対に停止しません』
断固としたそのことばに、一瞬トリスの動きが止まった。
ネスティが、血まみれになっている彼女の手を抑える。自分の手が赤く染まるのも厭わずに。
「……これが召喚兵器というものだ」
「ネス……!」
「誓約とプログラムの二重の鎖に囚われ、永遠に命令だけを実行しつづける生きた機械――それが、ゲイルなんだ……!」
命令の書換えは出来ないと云う。
撤回することは不可能だと云う。
さすがは兵器と云うべきか。それとも、すでに兵器ですらないのか。
ならば、もう、とる手段は、これまでそうしてきたように。
「だったら! ぶち壊してでも止めてやる! だから、俺たちをここから出してくれ!!」
マグナが叫ぶ。
それは、今、この場にいて仲間の戦いを傍観しているしかない全員の気持ちだった。
『しかし、それでは調律者も迎撃システムの標的に』
なります。だから、出せません。
――と、遺跡が云おうとしたかどうかは、判らない。
何故かというと、
「ごたくはもういいッ!!」
ごすッ!!!
遺跡の『声』を遮って、が再び、その場の空気を震わせたからだった。
「…………」
またもや衝動に任せて機械を殴りつけた手の甲は、それはもう真っ赤になったけれど。
さっき蹴っ飛ばしたときのダメージも、まだ足をしびれさせているけれど。
ぎ、と。
後々、『あれは本気で怖かった』とそれを見ていた者たちの間で語り草になったらしいくらいの勢いで、声の聞こえる方向を睨みつけては云った。
――が、云った。
「つべこべ云ってないで、あたしたちをここから出しなさい! みんなのところに送りなさいッ!!」
『……了解しました』
――遺跡が、応えた。