――そうして、最後の難関だったネスティの同意も得られたコトが確認された。すったもんだの末に。
ともあれだ。
改めて、一行が目指すは禁忌の森。
幼い頃のアメルが眠っていたという、伝説の機械兵器が眠っているという、封じられた悪魔の存在する、あの森へ。
そわそわするのは、いつか見た悪魔たちの怖さを思い出してしまうせいだろうか。
それとも、伝説の機械兵器を見ることが出来るからかもしれないからだろうか。
もしかして、アメルの生まれ故郷として改めて目にすることが出来るからだろうか。
なんだかどれも違うような気がするけれど、なんとなく心が急いているコトだけは自覚している。
「……ちょっとは落ち着いたらどうだい、」
「だ、だって……」
「ミニスもユエルも貴方より小さいのに、明日のためにってもう寝ちゃったわよ?」
「で、でも……」
「当のアメルも別に小さくないけど以下同文。マグナとトリスはネスティに部屋に追いやられてたから、まぁ以下同文ね」
「……うぅ」
上からモーリン、ルウ、ケイナ。
時間は、昨夜たちがシオンの蕎麦屋に出かけたころとほぼ同じ。
場所はギブソン邸の居間。
「皆さん、お茶が入りましたよ」
完璧にやりこめられたの後ろのドアから、お茶とお茶菓子をお盆に乗せてやってきたのはカイナ。
手慣れた調子でお茶を注ぎ分けながら、彼女はにっこり笑う。
「お酒をちょっと入れておきました。これでぐっすり眠れると良いんですけど」
「あたし未成年……」
「何固いコト云ってるんだい。いいだろ別に」
「そうそう。女の子しかいないんだから、ちょっとくらい羽目外したってだいじょうぶよ」
……羽目外すって何するつもりなんですかケイナ姐さん。
そんなにたいした量じゃないからと勧められて、結局、ブランデー入りだという紅茶を一口、二口。
云われたとおりお酒の味はしなかったけれど、なんとなく、身体がさっきよりあったまったような。
「……それにしても、こんな大事に首突っ込むことになるなんて思わなかったわね」
お菓子をつまみながら、ケイナがぽつりとつぶやいた。
モーリンと、ルウとカイナが、それぞれ顔を見合わせる。
うん、たしかに。
記憶喪失になったのは的に云えば大事だけど、国と国との戦争とか軍隊とか、ましてや伝説の機械兵器なんてものに関るようになるとは、あのとき全然予想しなかった。そも、出来るわけもなかった。
エルゴの守護者としての責を持っているカイナはともかく、モーリンもルウもケイナも、なんの見返りもないのにマグナたちのコト助けていてくれていることに、今さらだけれど気がついてしまう。
ふと思ったそれを口にしたら、
「それはもでしょ」
あきれたルウに突っ込まれてしまった。
「ルウは、ほら。アフラーンの一族として禁忌の森に何かがあるなら、それを探る権利があるんですからね」
彼女が続けてそう云えば、それが終わるかどうかのときにモーリンが口を開いて。
「あたいは、ファナンを助けてもらったから、その恩返しも兼ねてさ」
「私とフォルテは……なんと云ってもあの子たちをレルムに連れて行った主犯だものね」
「エルゴの守護者として、そのような危険なものがあるなら見過ごすわけには参りません」
…………
プッ、と、真っ先にふきだして口元を押さえたのはケイナだ。
「……なんて偉そうに云ってるけど、本当のトコロ、それって建前だわ」
「まったくだね。そんな高尚な理由ばかりで動いてるんなら、この一行、すごい正義の味方の集団だよ」
大げさなくらいの身振り付のモーリンのことばに、また、笑いが起こる。
――どうしてこんな危険な旅を続けているのかと云われれば、それはやっぱり、さっきみたいな理由も大きいと思うけれど。
こうしてみんなで一緒に動いているそのことが、好きなんだからだと思う。そうしてそのみんなの誰かが困ってるなら、一緒に行って手助けしたいって、そんな程度のことなんだ。
騒いでいた心が、少しずつ落ち着いていくのが判って、もみんなと一緒になって笑った。
夜だから、度を外したりはしなかったけれど。
そんなこんなでちょっとした、これは夜のお茶会の一幕。