あなたたち、無茶苦茶ですよ。
そうスウォンが云ったのは、サイジェントへの帰り道。
やけに満足した表情で歩いていたの背に、そのことばは投げかけられた。
「あははは、無茶苦茶ですか?」
「無茶苦茶です」
そんな、力一杯強調しなくても。
「でも……」
「はい」
「ありがとうございます」
「は?」
たむたむたむ。
思わずその場で足踏みして、最後尾を歩いていたスウォンが追いついてくるのを待った。
バルレルが、それに気づいて歩調を落とす。
さらに止まろうとした前一行に、いいから行け行けと手を振って。
どうも、さっきバルレルの名を呼びかけたっていうのがちょっぴり尾を引いてるっぽい。失言の影響は最小限にしたいということですか。
だけれど、スウォンが、そのバルレルに小さく頭を下げた。
――あまり聞かれたくない話、だったりするんだろうか?
歩調を落とした3人は、ちらちら振り返る前方の人たちから一定の距離を置いて、再び歩き始めた。
「いろいろ、思っていたんです。ハヤトさんたちに喝を入れられてから、あそこに行くまでも、ずっと」
はぐれ召喚獣。
それを生み出す召喚師。
その巻き添えをくったガレフ――そして、命を奪われた父のこと。
ああ、そういえば。
一度フラットに戻ったのも、ガレフの事実を知ったスウォンが、意気消沈していたからだっけ?
綾から聞いた経緯を思い返しているに、スウォンが落としていた視線を向けた。
「……そしたら、その仇を、食べるだのなんだの相談してるんですから」
ガゼルさんが行かなかったら、ボクが矢を射かけてました、きっと。
そんな恐ろしいコトをさらりと告げるスウォンに、はちょっぴり恐怖を覚えた。
「もう、なんだか、気が抜けちゃって」
復讐だとかなんだとか、そんな昏い気持ち飛ばすくらい、あなたたちは無茶苦茶だったから。
いや、そのわりに、あの黒いオーラはすさまじかったけど?
余計なことを思い返していたに、スウォンはにっこり笑ってみせた。
この日をいつか思い返すとき、きっと、哀しみと怒りだけに染まりはしないないだろうから、と。
――だからとりあえず、ありがとうございます。
「今度フラットに遊びに行くときに、おいしいキノコ持っていきますね」
そう付け加えてくれたスウォンの笑顔は、実に晴れやかで。
それが真実からの善意なのか、それともあの黒いオーラの名残なのか、たちはしばらく判断に迷ったりしたのである。