バルレルと、ソルとキールは、顔を見合わせる。
「……苦労してんだな、テメエら」
「おまえもみたいだな」
ため息混じりに交わされることばから生まれるのは、なんだか奇妙な連帯感。
どうやら、類は友を呼ぶということわざの正しさは、ここで証明されそうだ。
「んじゃ、とりあえず上の岩場に放り投げとくか」
「そうだな」
倒れているゴロツキは4人。
バルレルがふたりを抱え上げ、ソルがひとりを引きずって歩く。
そうして。
穴底から少し登ったところで、ふたりは半眼になって背後を振り返った。
「……いいから、無理するなよ」
一生懸命引きずろうとしているものの、ちょっとずつしか動かせないゴロツキの傍らで途方に暮れているキールに、とりあえずソルはそう云った。
そんな男どもの苦労など知らぬ気に、女の子たちは荒野を進む。
あちらが奇妙な連帯感を感じていたように、こちらも打ち解けるのは早かった。
まあ、自分も相手も夜の路地で日陰者してた、という、ちょっと誇れない共通項もあることだし。
相手の事情さえ下手に詮索しなければ、他愛もないことで盛り上がれるものだ。
もっとも、盛り上がりすぎて前を行く一行に発見されては元も子もないため、そのへんは注意していたけれど。
行きがけに一掃したせいか、はぐれにも遭遇することなく、道中は平穏に進む。
さっきのゴロツキとの戦闘で負った彼らの傷も、そう重いものではなさそうだ。
これなら、全員、無事にフラットまで戻れるだろう。
そんなことを話しながら、
「?」
ふと何かが引っかかって、は首をかしげた。
何か。
忘れてる、よーな気がする、よーな。
「? ? ?」
あれれ?
でも、穴底で伸びてたのは、全員オプテュスのメンバーだよね?
テテに吹っ飛ばされてたのも、オプテュス側の人だったよね?
第一ホラ、行きと同じメンバーが目の前に――
「……。」
指差して数えようとしたの目の前で、カシスとクラレットが不思議そうに振り返っていた。
だが、が硬直した理由はその斜め前。
正確に云うなら、街道からは少し死角になってる小さな岩場。
今まさに、綾たちが通り過ぎようとしているその場所で。
緑の髪の小さな女の子が、乳白色の髪の男の子にとっ捕まって、じたばたじたばた暴れていた。
「ガゼル、レイド、エドスっ!」
「フィズッ!?」
唐突に聞こえた幼女の声は、ガゼルにとってもレイドにとってもエドスにとっても――ついでに昨日今日行動をともにするようになった客人4人にとっても、聞き慣れた声だった。
本当なら今ごろ、フラットでラミやアルバと遊んでいるだろう、緑の髪の女の子。
ちょっぴりおませなお年頃の彼女は、自分たちだけで出かけると云った彼らを、ずるいずるいと怒っていた。
「だからって追いかけてくるかよ普通ッ!?」
走りよってくるフィズの脳天狙って落とした拳骨は、半泣きの彼女の表情で寸止めされる。
「何があったんだ? はぐれにでも追われたか?」
斧を構えてエドスが問うが、フィズは首を左右に振ることで否定した。
では、この泣き顔の理由は?
レイドが重ねて問おうとしたが、それよりも、フィズが口を開く方が早かった。
「“通りすがりのフラットの味方”が、あたしの代わりに捕まっちゃった――!」
誰にだ。
「というわけですみません、大人しくしてくださいね」
真っ白になった一行の頭に、この場では初めて聞く人物の声が飛び込んできたのは、その直後。
右手の岩場から出てきたのは、おそらくその声の主だろう。
乳白色の髪に、赤橙の眼の少年。何故判ったかというと、話は簡単。
赤い髪の“とおりすがりのフラットの味方”が、彼にがっちりと捕獲されていたからである。
「えーと、『たすけてー』」
「棒読みですよ……」
その割に、全然緊迫感ないんだけど、あんたら。