力の満ちてゆく彼らを見て、バルレルが小さく鼻を鳴らした。
「なんだ、そーいうことか」
どうりで、天使も悪魔もねェ、純正サプレスの力だったわけだ。
最初の儀式で霧散したと思われた、サプレスのエルゴの欠片。
それは、彼らの裡に在ったのだ。
5つのエルゴのうちのひとつは、もう、彼らを選んでいたのだ――
「ちゃん」
そのひとり――アヤが、に歩み寄る。
「?」
首を傾げるに、アヤが短剣を手渡した。
一振りの剣。
それは、が使っていた剣ではない。無色の派閥にとらえられたとき、もういずことも知れぬ場所へと行方不明。
「なんだこりゃ?」
覗きこんだバルレルが、怪訝な声をあげる。
「ウィゼルさんが、ちゃんに返しておいてくれ、って云ってました」
「ジジイが?」
「……?」
いぶかしく思いながらも、はそれを鞘から抜いた。
とたん零れる、真白き光。
それはまさしく、彼女の焔。――を思わせる、白い剣。
いかなる金属を用いれば、それが可能になるのだろう。白、としか表現出来ない刃の放つ輝きは、たしかに焔、白い苛烈。
……これはあたしのだ。
何の脈絡もなく、そう思う。
同時に、ウィゼルもまた、“”についていったい何を知っているのか、ひどく気になった。
けれど――もう。
それをたしかめる時間は、ない。
――――オオオォォォォォオオオオオオォオォォォォォッ!!
魔力の渦に守られていたバノッサ――いや、魔王が咆哮する。
ピシリ、亀裂。
「……」
向き直った一行の前に、
ピシリ、また亀裂。
まるで孵化を待つ雛のよう――でも、生まれてくるものは、悪魔の王だ。
そうしてその周囲。
まるでそれを守るかのように、次々と出現する悪魔兵。
その数、ゆうに20を越える。
「手勢を呼んだか……」
ラムダがつぶやき、剣を構えた。
「チ」
こちらの魔王が、小さく舌打ち。
同時に、彼らの背後からも悪魔兵が現れる。
辿り着いてからのあまりの展開に忘れていたが、元からこの場にいた悪魔兵たち。
挟み撃ちかと瞠目した彼らに、当の魔王が親切に注釈。
「オレの側だ」
「……え?」
ぽかんとしたガゼルのことばに、
「今はテメエらの敵じゃねぇ」
――と、とらえようによっては危険な発現をして。
説明の義務はそれで終わったとばかりに、彼は再び視線を前方に戻す。
その口の端が、ニイィ、と、つりあがった。
「――出るぜ」
それが、合図になった。