吹き荒れる黒い嵐、嫌な既視感。
原罪の風というほど悪質なものではなくても、それはたしかに、生きる者すべてに影響を与え、澱ませる。
「これが、魔王……!?」
初めて目にするその存在に呆然としているハヤトたちを余所に、ソルたちがいち早く我を取り戻す。
ぎっ、と、素晴らしい勢いで振り返った先は、とまーちゃん。
「! まーちゃん!」
「なんだよ」
「おまえたちは、俺たちの護衛獣として契約を結んだな!?」
それは単なる口約束。
それは単なる建前。
それでも。
「……」
こっくり、は頷いた。
「一応な」
ククッ、と、まーちゃんが笑う。
こんなときだというのに、どうして、このふたりはこうなんだろう。
いつか遠い日を思い出す。
まだ、同じ屋根の下に転がり込んでいたころ思ったことと同じようなそれを、今も思う。
そしてそれは、ソルたちの感じていた圧迫感を、多少なりともやわらがせる。
「で? そのカタチだけ護衛獣に何の用だよ」
オレが魔王だと知って、何を命令する気だ?
彼の表情は、しごくわかりやすい。
気に入らなければ先にテメエらを殺す、と、なんでもないことのように雰囲気が語る。
すくみ上がりそうな足を心のなかで叱咤して、4人はふたりに向かい合った。
「力を貸せとは云わない」
それが嘘でも戯言でも、護衛獣を名乗ったのなら。
「一度だけでいい」
「この戦いだけで構わない」
「……俺たちの、敵になるな」
「――――」
はい。
黙ったまま頷くの笑みは、そう云っていた。