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がんばれ炎の英雄・3

注:このお話はヒューゴ→クリス前提の、すげぇくだらないギャグですらない駄文かもしれません。
このカップリングがダメな方、もしくは読んだ後魂抜けたくない方は読み進めないほうが吉でございます。

っつーかヒューゴがだんだん変な方向に暴走してますゴメンナサイ。


「クリスさーん、・・・・・・って、あれ?」

 ゼクセン誉れある六騎士(クリス除外)を、さんざんな目に遭わせた数日後。
 例のごとく例によって、白き乙女の居室にアタックをしかけた炎の英雄は、そこに従者の少年しかいないことに首を傾げた。
「わあっ、ヒューゴさん!??」
 先日さんざんな目に遭わされた従者の少年ことルイスは、炎の英雄の出現に壁際まで瞬間的に逃げた。



 ビュッデヒュッケ城は、自然に恵まれている。
 一歩外に出てあたりを見回せば、すぐに緑が目に入るくらいだ。
 湖の傍なだけあって水にはことかかないし、土の状態も、バーツに云わせれば至極良好らしい。
 その城の門から左手の階段を下り、奥へ進んだ突き当たりにあるレストランでは、風に梢が揺られる音をBGMに、対岸の北の洞窟あたりまで臨めるほど景色が良い。
 料理人であるメイミの腕前も手伝って、本拠地のレストランは終日賑わいを見せていた。

 その一角。
 オープンカフェを模しているレストランの、最奥の丸テーブルについているのは、ここのところ炎の英雄に悩まされている白き乙女ことゼクセン騎士団長クリス。
 珍しく、銀の鎧を装着しておらず、普段ならまとめている髪もおろし、風にさらされるままにしていた。
 その正面で、相変わらずのポーカーフェイスを披露して渋茶をすすっているのは、過去の炎の英雄の親友であったハルモニア辺境警備隊第12小隊隊長ゲド。
 こちらは相変わらず右目の眼帯も健在のほぼ黒ずくめ、村のお子さんからたまに怯えられる悪人顔と一部で評判の――失礼。
 ちなみにこのふたり、真の水の紋章と、真の雷の紋章の継承者でもある。

 ・・・ふう、と、紅茶を一口飲んだクリスから、小さな吐息がこぼれた。

「・・・・・・安らぐな・・・・・・」
「俺たちと茶を飲んで、安らぐのか?」
「・・・彼と飲むより数百倍は安らぎます」
「・・・・・・そうか」
 紅茶とケーキ、渋茶と桜餅(書き手の趣味です←オイ)という、傍から見たらアンバランス極まりない組み合わせの午後の茶会である。
「お待たせ。これでいいかい?」
「ああ、すまんな」
 そこに、自分の分とゲドの追加分のセットを持って、立ち居振舞いもさっそうとやってきたのはクイーン。
 彼女はさっさとゲドの分と自分の分をより分けて置くと、ゲドの隣に腰を下ろした。
 続いて、ジョーカーとエースがちょっとは酒を控えろだのおまえが食いすぎだなど、賑やかしくやってきて同じテーブルにつく。
 最後にソーダを大事そうに抱えたアイラと、オレンジジュースを片手に持ったジャックである。
 これで、ゲド小隊+ゼクセン騎士団長というぱっと見、かなり楽しい組み合わせが出来上がった。
 ちなみにクリスの座った席は最奥のテーブルのさらに奥、入り口からでは手前に座っているメンバーに阻まれてクリスにまでは気づかれないと思われる。
 それを確認して肩の力を抜いたクリスを見て、クイーンが同情と哀れみのこもった視線を向けた。
「・・・ここまでしないとゆっくりお茶も飲めないなんて、好意を向けられるのも難儀なもんだねえ」
「……好意なのだろうかあれは」
 私には、殆ど嫌がらせのようにしか思えないんだが。
 ばくだんたまご(特製)の餌食になったボルスとパーシヴァル、Tクリティカル連発された上にアイクの笑顔というコンボをくらってむしろ精神的にダメージをくらったレオとロラン(ついでにサロメ)、リザードクランの民によって軟禁されたルイス。
 ――というような経緯をとっくに聞いていた第12小隊の一行は、クリスのことばに同意するべきか悩み、一瞬の沈黙が場に落ちた。
「・・・・・・好意、だと、思う・・・・・・・・・・」
 オレンジジュースのストローから口を離し、ぽつりとジャックがつぶやいた。
 クリスが何か云うより先に、ジョーカーがそのことばに反応を示す。
「ほう? 何故じゃ?」
「・・・・・・我侭は・・・そういうものの、現れだと・・・・・・・・・・・・」
「そうかあ? それにしちゃ、あれはちーと行き過ぎてねえか?」
 ていうか我侭ってかわいい単語で片付くレベルかよ、あれ。
 エースのことばに、うんうんとクリスが頷く。
「・・・子供だから・・・」
「私の部下をことごとく再起不能にするような奴を、子供だと思いたくはない……」
「……ヒューゴ、いったい何したの?」
 ソーダを味わい終わったアイラが、ここで初めて会話に割り込んだ。
 ちなみに彼女は、先日の顛末を知らない。故に今の発言も、当然のもので。
 そういえば、この子もカラヤの民だったなと一同の視線が集まる。
「・・・アイラ」
「何?」
 この人にしては珍しく、おずおずと話しかけるクリス。
 対してアイラは、至極平然と向き直る。
 お互い思うところはあるようだけれど、最近はけっこう、いい感じになっているような。気がしないでもないような。どっちだ。
「その……ヒューゴは前から、あんななのか?」
「あんなって?」
「……ああいうふうに、その……。うまいことばが思いつかないな……えぇと……」
「ああいう、気に入った女に押せ押せ攻勢かけるような奴だったのか?」
「エース、あんたは直接的すぎ」
 助け舟の横から、ため息混じりにつっこむクイーン。
 その前で、アイラはきょとんと首を傾げた。
「どうだろう? ヒューゴはそういう噂とかまだなかったから。・・・でも、わたしも、クリスへのはちょっとはりきりすぎだと思う」
「・・・彼のあれは、カラヤのしきたりとか、そういうのではないのだな?」
『ないないないない』
 再度のクリスの質問には、アイラのみならずゲド隊(隊長とジャック除く)全員のツッコミになった。

「カラヤのしきたりって云うより、おれルールって感じだけどね」

 そこに、実に明るく朗らかに、第三者の声が割り込んできた。
 ゲドが片方の眉を持ち上げ、ジャックは無表情にそちらを見る。
 アイラが文字通り飛び上がり、クイーンは少しだけ目を丸くした。
 エースが口笛を吹き、ジョーカーが酒を取り落としかける。

 炎の英雄の頭上では、宅配完了とばかりに、フーバーが声高に鳴いて飛び去っていた。

 クリスはひそかに習得していた神行法のスキルでもって、電光石火でゲドの後ろに回りこんで隠れた。

 そして、気配も感じさせずにゲド小隊+ゼクセン騎士団長の茶会の席に出現したヒューゴは、にっこり笑顔でエースを蹴っ飛ばして席についた。
「何しやがる!!」
 そんなコトされりゃ、当然怒る。
 だが、怒る相手が悪い。
「何?」
 まだ子どもだというのに、この壮絶な雰囲気はいったいどこから湧いているのか。
 ヒューゴの視線を正面から受けて、エースはごくりと喉を鳴らしたきり黙り、傍のテーブルから椅子を持ってきて腰を下ろす。
 そして、炎の英雄はそれを満足そうに頷いて見届けて。

「クリスさん」

 語尾に音符とハートが乱舞しそうな口調で、真なる雷の紋章継承者の後ろに隠れている真の水の紋章継承者の名を呼んだのだった。
「な・・・なんだ?」
 必死に視線をそらそうと頑張りながら、とりあえずクリスは応える。
 ああ、無視しとけばいいのに、と哀れむようなクイーンのつぶやきが聞こえたが、無視したらまず間違いなく、余計ややこしいコトになると思われた。
 そうしてヒューゴはやっぱりにこやかに、クリスに云った。
「散歩に行かない?」
 クリスは半ば怯えながら、でも表には出さないで、すまなさそうな顔になる。
「……申し訳ないが、私は今、彼らとお茶を――」
「今は駄目?」
「すまないが・・・」
 視線を合わせたらそのまま押し切られそうで、クリスは、盾にしたゲドの背中を見ながら答えている。
 そうしてヒューゴは、つ、と顎に手を当てた。
 どうなるかと一同息を飲む。
 が、
「そうか……。うん……判った。それじゃしょうがないや」
「――ヒューゴ……」
 これまでの強引っぷりが嘘のように、ヒューゴはやけにあっさり引き下がる。
 いったいどうしたのだろうと、クリスを始め、ゲドとジャック以外が不思議そうな顔になるなか、彼は背中を向けて歩き出した。

 そのあっけなさに、逆にクリスの方が罪悪感を感じてしまう。

 そうだ、いくら炎の英雄とは云ってもまだ子供なんだし、いろいろと羽目を外したいこともあるだろうに。
 私は彼の友達を斬ってしまったのに、それでも普通に(そうか?)接してくれるのだから、むしろ感謝すべきことではないか?
 今回だって、たぶん探していてくれたのかもしれないのに・・・

 悪いことを、してしまっただろうか。

 クリスの表情を見て、察したらしいクイーンが、やめておきなさいと口を開くより早く。
「……あ、あの、ヒューゴ」
「何?」
 振り返ってくれたことにさえ安心して、クリスは云う。
 自爆発言を。

「今は無理だけれど……今度、機会があったら、付き合うわ。それで良い?」

 そのときのヒューゴの顔こそが見物だったかもしれない。
 ぱちくり、目を見開いてまたたき数度。
 それから、本日一番の全開笑顔になって。

「ああ。ありがとう」

 ――と、そこまでは良かったのだ。

「じゃあ今夜迎えに行くから、窓の鍵は開けておいて」

「・・・・・・え?」

 クリスの動きが凍りつく。
 クイーンが、処置なし、とつぶやいて両手を持ち上げ肩をすくめた。

「城内移動するといろいろうるさい奴と逢いそうだから、外から行くけど問題ないよね。フーバーにも、ちゃんと静かにするように云っておくから。あ、出来たら今みたいな格好がいいな。鎧姿のクリスさんも凛々しくて好きだけど、そっちの方が襲いやすそうだし」

 最後の不穏当な発言はなんだ。

「おっ……襲……!? ……そうか……」

 驚愕したものの、すぐに瞼を伏せ、哀しそうな表情になったクリスに、一同の視線が集中した。
「ヒューゴ、やっぱり、私を恨んでいるのね……」

『いや、襲う意味が違う』

 やっぱり、ゲドとジャック以外全員の合唱になる。
 はあ、と、ため息をついたヒューゴに、なんだか同情的にエースが話しかける始末。
「・・・苦労してるんだな、おまえも」
「まあ、それなりですね。・・・楽しいけど」
「そうかいそうかい」
 襲う意味ってなんだ? と問うクリス。
 私に聞かないでくれないか、と、こめかみ押さえて答えるクイーン。
 わたしも知りたい、とアイラ。
 ・・・・・・・・・・・・(冷や汗流して目がお魚)な、ジャック。
 早々に事態を投げ出して、ウエイトレスのおねえちゃんに酒を頼みだすジョーカー。
 そうしてそんななか、クリスの盾にされたまま、文句を云うでもなく立っているゲド。

 しっちゃかめっちゃかなその状況に終止符を打ったのは、やはり炎の英雄だった。

「じゃ、そういうことでよろしく、クリスさん」
「え? あ、ええと――」
「機会があればって云ったよね。夜は暇でしょ?」
「いえ、そう云ったけれど、でも、夜はやはり――」

「でも、おれ、クリスさんに見てほしい景色があるんだ。おれが見つけた気に入りの場所なんだけど」

 そういうの、いやかな?
 少しばかり意気消沈した様子で、ヒューゴがそう云ったのが、最後だった。
 クリスは数度、口を開いては閉じ、結局、諦めたように肩を落として、
「判ったわ」
 と、苦笑交じりに、微笑んだ。
 のと同時。
 ぱああぁ、と、ヒューゴの周りに花が飛んで。
「ありがとう! じゃあ今夜行くから!」
 寝たりしたら駄目だからね、と、念押ししつつ、炎の英雄は走り去ったのである。


 ――まるで嵐がきたような疲れに教われ、クリスは、今の今まで盾にしていた人物によりかかって・・・はた、と、我に返った。
「あ、うわ、申し訳ありません!」
 自分のせいで立たせたままにしてしまったゲドから両手を離し、勢いよく頭を下げる。
「気にするな」
「いえ、本当にすみません、せっかくゆっくりしていたのに……」
「……なんでもないことだ」
 それより、おまえの方が大変だろう。
 そう云われ、クリスの身体がぐらりと傾ぐ。
「……お気遣い感謝いたします……」
「ねえ、クリス。今日はもう予定はないんだろう? だったら今のうちに寝ておおきよ」
「……その方が良いでしょうか」
「ああ。ふたりきりになったら、あいつのことだ。一晩中一緒にいるとかぬかしかねんぜ」
 もっとアレなコトに持ち込もうとか考えてるかもしれんしな、とエースが云い、クリスが首を傾げると同時。
「じゃから、おぬしは時と場合を考えて発言せんか!」
 と、ジョーカーの投げたコップ(酒入り)が、彼の後頭部に直撃した。


 おことばに甘えて、眠ることにします、と、騎士団長が去ったのち。
 またテーブルに戻り、それぞれ適当に軽食をとりはじめたゲド小隊。
 ふと、クイーンがゲドに向かって話しかける。
 曰く、
「あんた今回、えらくあの騎士団長さんを気にかけてやったじゃないか。そういう趣味だったのかい?」
 半ば揶揄を含んだことばに、けれどゲドは真顔で首を横に振る。
「そういうわけじゃない。・・・ただ・・・」
「ただ?」
「以前、ヒューゴから相談されたことがあってな」
「身長のこと?」
 横槍入れたアイラに、違う、と再び首を振り、

「押しても押しても振り向いてくれない女性を、なんとかして手に入れたいんだがどうすればいいか・・・と」

 そのときは、クリスのことだとは思わなかったのだ。

『・・・・・・』

 思えよ。つーか気づいてなかったのかよ。

「それで、一般的な【押しても駄目なら引いてみろ】というのを、話した」

『・・・・・・・・・・・・』

「大将」
「なんだ?」
「騎士団長さんが明日帰ってこなかったら、俺たちで探しに行きましょうね」

 大将の責任は俺たちの責任です。

 ・・・やはり俺のせいか。

 当たり前でしょうが。

 ・・・・・・・・・・仲が良いのは・・・良いことだな・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 違ッ。


■BACK■



ヒューゴはこんな子じゃなーい! と、画面の前で叫んでいるおぜうさん。
ごめんなさい。でも管理人書いてて楽しいです(こら)
クリスにとって、ゲドはお父さんみたいな雰囲気かなー、と。父の親友だし。
ゲドも、クリスに対してはそんな感じかと思います。ふたりでほのぼの。
で、それを見てヒューゴがやきもきしてふてくされてる、と。
タイトル、『続々〜』にしようと思ったけど今回から番号。
だってまだ続いたとき、『続々々々』とかなったら、かなり自分が阿呆な気分ですし(笑)