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がんばれ炎の英雄 |
炎の英雄としての道を歩むと決めたヒューゴは、ビュッデヒュッケ城を手に入れ本格的に活動を開始した。 〜カレリアにて〜 宿屋の2階に全速力で駆け上がる一行を、他の客がなんだなんだと眺めるなか。 「ナディーーーール!」 「はッ、はい!!?」 仮面をつけた劇団設立希望者は、ばかでかい声の誰何に思わず身体を震わせた。 ダン!! ぜーはー云いつつ賭けあがってきたヒューゴ一行の鬼気迫る形相を見て、ナディールの動きが止まる。 いや、鬼気迫っているのはヒューゴだけで、他の5人はただ単に息があがって死にそうなだけだが。 まあ本拠地から平原越えて山越えてやってきたのだから無理もない。 そうして。 ビシィ! と、後ろに控えている一行を指差しヒューゴは云った。 「男3人女2人子供1人のパーティだ!」 とっとと城にこい!! その様子を見ていた村人は、のちにこう語ったと云う。 あのカラヤの子ほどの人物なら、いずれはハルモニアさえぶっとばせるかもしれないと。 〜北の洞窟にて〜 「おらおらおらおらおらーーーーー!!」 ヒューゴ一行の駆け抜ける前に敵はない。 いや、いるんだけど1ターン瞬殺。 新記録樹立な勢いで駆け抜けた先にはダンジョンボスが! 「邪魔だーーーーーーーーーー!!!!!!」 ゲシイイイイィィィ!! 「脚本は!? あったな!!! 引き上げよう!!!」 ダダダダダダダダダダダダダッ その様子を見ていた魔物は、のちにこう語ったという。 何があってもカラヤの村だけは襲うまいと。(すでに襲われてるけどな) 〜本拠地・劇場前にて〜 にこにこにこにこにこにこ。 「・・・・・・ご機嫌だな、少年・・・・・・」 「少年じゃない。カラヤのヒューゴだ」 「そうか。・・・で、何がそんなに嬉しいんだ?」 「これ」 ぽん、と、クリスの手のひらに乗せられた脚本一冊。 タイトルは『ロミオとジュリエット』。 「・・・劇場の脚本か。・・・ふむ?」 ぱらぱら、と頁をめくるクリスの表情が微妙に複雑になっていく。 最後の1ページを見終えた彼女は、バン、と本を閉じるとあからさまなつくり笑顔でヒューゴに脚本を返した。 「見せてくれてありがとう。それじゃ」 がしッ 「何云ってるんだよ、クリスさんも出るの」 「黙ってるだけで済む城の兵士役なら、妥協して協力しよう」 「兵士役ならもっと適任がいるじゃないか」 「そうか、それじゃあ私の出る幕はないな」 「あるだろ、ひとつ。ピッタリなのが」 「遠慮するよ、私には恐らく似合わないだろうしね」 「きっと似合うよ、だいじょうぶ。おれが保証する。っていうか遠慮したら燃やす」 恐ろしいコトに、この会話はすべて笑顔で応酬されております。 「・・・・・・英雄がそんなことしていいのか?」 「英雄の前におれはひとりの男なんだ」 「・・・ナディール勧誘のパーティ編成のとき、子供1名の方だったくせに」 「ああ、その件に関してはナディールにはよく教え込んでおいたから」 炎の英雄様に対する態度を。 「――――――――」 「何黙祷してるんだよ」 「・・・いや・・・さすがに哀れを感じたよ・・・」 「まあそれはそれとして」 ずりずりずりずりずり。 「待て、こら、引っ張るな!!」 「嫌よ嫌よも好きのうち〜」 「変な節で変な歌を歌うなーーーー!」 音痴が云うな。(酷) 〜劇開始〜 (中略) 〜劇終了後〜 「・・・・・・・・・・・・」 「ああ楽しかった。・・・・・・何泣いてるんだい?」 「・・・もうお嫁に行けない・・・」 「なんで? おれのトコロにくればいいじゃないか」 にこやかに自分を指差して云うヒューゴ。 ひくりと固まるクリス。 「貴様……まさか最初からそのつもりで私を劇に引っ張り出したな……?」 「うん。」 「……舞台が終わったあと、どさくさに紛れて、く・く・・・口付けしたのも……」 「うん。」 クリスの質問のたびに、全開笑顔でヒューゴが答える。 それと反比例するように、クリスの背後にどす黒いオーラが渦巻きだした。 だけれど、そこはさすがに騎士団長。 必死の思いでそれを押さえ込むと、震える口調ながらもヒューゴに向き直る。 「・・・今日のコトはお互い忘れよう。それが身のためだ」 「なんで?」 「私はゼクセンの騎士だし、おまえはグラスランドのカラヤの子だ」 視線を合わせて、なんとか諭そうと。 「・・・万が一億が一お互いがそれを望んでも、周りが許さないだろう? 特にカラヤの民……おまえの母親も悲しむぞ」 「なんだ、そんなこと?」 「そう、そんなこと・・・・・・ってヲイ」 「そんなの大した障害じゃないよ。とりあえずクリスさんを貰うって云ったら猛反対してきたあの騎士たちはもう燃やしたし」 「・・・・・・は?」 「それにおれ、次期カラヤの頭領だし」 つまり、誰にも文句は云わせない。と。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「あれ? どこ行くんだ?」 「おまえのいない世界」 「じゃあおれも一緒に」 「だからおまえのいない世界に行きたいんだ私はッ!!」 「おれはずっとクリスさんと一緒にいたいけど」 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ、人の話を聞け、頼むから!」 「聞いてるよ? お互いがそれを望んでも周りが許さない、って?」 「当たり前だろう?」 説得完了かと思ったクリスの目に、にっこり笑うヒューゴの表情が映った。 やばい。これはやばい。逃げたほうがいいのかもしれない。 頭のなかでの警鐘は、けれど行動に移せなかった。 ヒューゴが、がしっとクリスの腕をつかんだせいである。もちろん全開笑顔で。 「お互い、かぁ。嬉しいな、クリスさんもおれと同じ気持ちだったんだ」 「自分の都合のいいように解釈するな! 万が一億が一と云っただろうが!」 「式はカラヤ風でいい? グラスランドは暑い日が多いから、服は薄着のやつを用意しといたほうがいいよ」 「待て、待ってくれヒューゴ。私は――」 「子供はやっぱり男がいいな、ふたりめは女で、出来れば3人くらいまで。おれ兄弟いなかったから」 「・・いや、だから、私はだな」 「ああ、やっぱりあのとき決心してよかった」 満足そうに伸びをするヒューゴ。 「炎の英雄万歳って感じだな」 「おまえなんか英雄じゃないーーーーー!!」 頑張れ炎の英雄。(と、その毒牙にかけられる銀の乙女) |
ヒューゴが黒くてごめんなさい。(米つきバッタ) っつかクリスさん、騎士団純粋培養だし......いや、ヒューゴ君もカラヤ純粋培養。 3人の主人公のなかじゃ、やっぱゲドさんがいちばん大人ですよね。 ってそうじゃなくて。 もし読んでくれた方いらっしゃったらありがとうございますv |