創作 |
■BACK■ |
うちには悪魔が一匹いた。 こないだ天使が一匹きた。 おかげで人外が二匹になった。 「ねえ、あんたって――」 「え?」「はい?」 「…………」 呼んだのはひとり、応えるのはふたり。 わたしの背中に乗っかった悪魔と、窓辺に腰かけてた天使が、顔見合わせて眉根を寄せた。 そして、わたしはそれ以上にしかめっ面になっていた。 「なんでおまえが返事するんだよ」 「それはこちらのセリフです」 そんなわたしのことなど知ったこっちゃなく、悪魔が天使に食ってかかり、天使が悪魔に食い下がる。 振り向かなくたって判る。バックはきっと、うどろどろどろベタフラッシュだ。 さしずめわたしの額には、縦線がざーっと入ってるだろう。 いや、それとも怒りマークが無数に生誕してるとか。 「だって、あいつ、俺のこと呼んだんだぞ」 なのになんでおまえが返事しちゃうかな、このバカ天使。 「違います。彼女が呼んだのは私です」 汚らわしいからそれ以上近寄らないでください、悪魔如きが。 ……雷が飛んでる。間違いない。 だってほら。 今飛んできたヤツのせいで、机の端っこが少し欠けた。 あ。 また飛んできた。机が削れた。 「もー、おまえさっさと天界に帰れ! ジャマ!」 「そちらこそ、潔く魔界に堕ちなさい!!」 ……あ。 壁、抉れた。 「ちょっと、あんたら」 ガカッ! 振り返りしな投げたシャーペンとボールペンは、きれいに、悪魔と天使の眉間に突き立った。 わたし、暗殺者でもやれるんじゃないか? で、刺されたふたりは当然、その場で動きを止める。 ……ふむ。 蛇を前にしたカエルのよーな表情、役柄にそぐわないことしきりである。褒めてあげよう。 「ひどいー」 半泣きで、悪魔が額を袖でぬぐった。 それで額の血は消える。血もついてないシャーペンが、その手のひらに落ちた。 「……非道です」 嘆かわしい、そうごちて天使は額を手のひらで覆う。 それできれいなボールペンが抜けて床に落ちた。 「やらせてんのは誰よ」 シャーペンとボールペンを没収してケースに突っ込みながら、わたしは二匹を睨みつける。 筆立ての横には、ブックエンドに挟まれた本がある。 国語辞典と漢和辞典、あと英和に和英と、辞書の類が勢揃い。 手の届くところにこういうの置いとくと、宿題のときにはありがたい。 その辞書のうち半数以上に赤い染みがついてるのは、いったいどういうことだろね。 ……その染みも、そもそもの天使も悪魔も、他人様には見えてないあたり、腹が立つったらありゃしないけど。 まあ、だがしかし、だ。 「今回は、わたしにも非があるけどさ」 しょぼくれた二匹が、それで、ぱ、と顔を輝かせた。 頷くと辞書が飛ぶのが判ってるからか、それ以上のリアクションはない。ち、要らんところで学習能力を発揮してからに。 辞書に伸ばそうとしてた手を止め、わたしは、こめかみの頭痛をどうにかこうにかやり過ごしつつ問いかける。 「とりあえず、ひとつ確認したいんだけど、いい?」 「うん」 「はい」 悪魔と天使は声を揃えて頷いた。 わたしはふたりを指さして、 「あんたら、名前は?」 そんな、今さらながらのことを訊いてみた。 天使がきょとんと目を見張る。 「名前を交わしていなかったんですか?」 「うん」 応えて悪魔が解説する。 「だって、いつも俺、『人外』とか『悪魔』ってしか云われてないし」 「ああ、それはとても賢明です」 しっかとわたしの手を握り締め、天使は真顔で頷いている。 「名前の交換は正式に契約を交わす条件ですから」 「そうなの?」 それじゃあ、わたしは知らない間に、一応自分の身は守っていたというわけか。 うん、偉いぞわたし。自己防衛本能バッチリだ――……って。 「う〜〜」 「何をする、悪魔!」 天使に捕まれたままこくこく頷くわたしの手を、悪魔がぐいーと引き剥がす。 が、それはどっちかというと無駄な労力か。 悪魔に触れられた天使は、かの大阪は道頓堀in真夏に落っこちたモノを見るような目で、しゅぴっと手を退いたのだから。 当然わたしの手は自由になり、それを悪魔が引っつかむ。まておまえ。 「いいんだよ、別に正式な契約がなくたって、俺がこいつと契約しようって思ったことに変わりないんだから」 「消しゴムで喚び出されたくせに」 ――っていうか。 「自分で応じたんなら、なんであんた、あんなちゃちいまじないで召喚されようとか思ったわけ」 「む。それは私も気になりますね」 悪魔から距離をとらんとし、壁際に後退した天使が云った。 いつの間にか、部屋の隅に放置してたはずの『ひみつの☆おまじない』を手に持っている。開き癖がついちゃった『消しゴム使って100点とろうおまじない』の頁が燦然と輝いていた。……主に、奴の周囲に漂う光のせいで。 情けなさが倍増するからやめてほしいなあ。 などと思うわたしの気持ちなど知ったこっちゃない天使は、ぴっ、とそれを指さした。 「こんな子供っぽい幼稚な儀式ですらないお遊びの陳腐なモノで、さしたる効力があったわけでもないでしょうに何故貴様はそれに応え――ごふぁッ!?」 セリフの途中で、悪魔がいそいそと手を放した。自由になった手でもって投げた辞書――分厚さはナンバー2――が、それで見事に天使にヒット。 ああ、幼稚なのは認めましょう。 だけどね。 それを真面目にやってたあの夜のわたしにしてみれば、そこまで強調されるとやっぱり腹が立つわけよ、うん? そのへんまだまだ甘いね天使。悪魔のほうが慣れてるぞ。 いや、そんなんで勝っても嬉しかなかろうが。 それから悪魔、勝ち誇った顔でにやにやするな。ちっとも名誉なこっちゃないんだから。 「気になる?」 こき、と首を傾げて悪魔がわたしを振り返る。 「そりゃねえ」 元々質問したのはわたしだし、悪魔がここに来たのが自分の意思でっていうのなら、その理由は知りたいところ。 頷くと、悪魔はにぱっと笑ってわたしに告げた。 「だってさ。いまどきまじないなんて真面目にやる奴いないじゃん? だから、俺らも結構仕事にあぶれてんだよな」 「それはありますね。神の存在を信じる方も少なくなってきています、神秘の領域が減っているのは嘆かわしい」 このへんの悩みは、人外同士で共通らしい。 二匹は顔を見合わせて、しみじみとため息をついている。 コンマ一秒もしない間に、ばっ、とそっぽ向いたけど。 「でね」、 気を取り直してこちらを見、悪魔の説明再び開始。 「悪魔崇拝者がやる儀式って無駄に大掛かりだから、こう、名前の知れた有名どころばっかりが対象でさ。下の奴らがリストラ気味。何より願い事がマンネリ化してんだよな」 世界征服とか世界破壊とか無限の力とか。 「ええ、本当にそうです。毎日の祈りを繰り返し、道を開いておけば救いの手はいつでもそこから差し伸べられるというのに、都合のいいときだけ奇跡を願う輩が多すぎます」 日々の積み重ねなしに結果は出ないというのに。 微妙にベクトルは違えど、やはりそれも共通らしい。 人外二匹は顔を見合わせ、心なし同情したような視線を――向ける直前にハッと気づいてそっぽを向いた。 あんたら、実は意外と気が合ってないか。 とはいえ、些細なコトにツッコミ入れるのも疲れる。ので、わたしは机に片肘ついて先を促した。 「でさ。そういう有名どころがいなけりゃ、下っ端にも仕事が行くじゃん? 俺って優しいから、なんとかあいつらにも仕事回してやらにゃあなって思ってて――で、出た結論がコレだったわけ」 名付けて、どうでもいい願い事を叶えに出かけて儀式使って喚び出されるのを回避しよう作戦!! ぱんぱかぱーん! と拳を天に突き上げる悪魔。 ……えっと。 今のセリフって、なんか、深く考えるとかなりヤバ気な結論が出てきそうな気がするんだけど? 「――ほう、悪魔の割に考えますね。かくいう私も、直に人界の様子を見に行く機会が減っていたので、今回のそれは渡りに船だったのですよ」 うんうん、と、腕組みして頷く天使。 ……ヤだなあ。こいつの発言も、なんか背筋に迫るモノがあるわ…… 「へー、上でふんぞり返ってるだけが天使の能かと思ってたよ、俺。わりかし勤勉なのな、おまえ」 「貴様こそ。底で勢力争いばかりしているかと思っていましたが、下々のことまで考えるとは、少々見直しましたよ」 ぎちぎちぎち、と、血管の浮き出る握手を交わす天使と悪魔。 何意気投合してるんだろうか、こいつら。 だけど、わたしは口を挟まない。 なんだか挟んだら最後、すっごく嫌な未来が襲い掛かってきそうだからだ。これぞ第六感、類人猿が人間になってから鈍りまくった獣の領域。 だが、そうは問屋が卸さない。 「というわけで、最初の質問のことだけど――って、どこ行くの?」 「あんたたちのいない場所」 財布と自転車の鍵片手に部屋を出ようとしたところを、目ざとく悪魔に発見された。同じ部屋にいたんだから当たり前か。 その腕を、ふわりと宙に舞った天使が掴む。 「ご自分から質問なさっておいて、中途半端に席を立たれるのは感心しませんよ」 それは相手が何者であっても同じことなのですから。 「ごめん自己防衛本能がニゲロニゲロと叫んでるんで」 袖口に隠しておいた安全ピンを取り出して、ピン、と指先で針を弾く。そのまま天使の眉間に刺した。 「はうッ!?」 よろめいた天使を、 「ていっ。」 「うわっ!?」 悪魔のほうに突き飛ばし、わたしはそのまま部屋を脱出。階段を駆け下り、玄関にダッシュ。 「あら、ちーちゃんお出かけ?」 「ちーちゃん云わないでお母さんッ」 のんきに台所から顔を出した母親に、一喝。 「あらまあ」と、目を丸くしたのんきなひとの横をすり抜けてサンダルを突っかけドアを開けた。 ちらりと見た二階の自室の窓では、ちょうど、バチッと火花が散っている。 フッ、こんなこともあろうかと『ひみつの☆おまじない』に載ってた『幽霊を通さないおまじない』をドアと窓に仕掛けといたのよッ!! もっとも、わたしの本能が正しければ、アイツラ相手にそんなものがどこまで保つか。 「おや、出かけるのかい?」 「一年ほど帰ってこないかも」 「――休学届けは?」 「おって連絡する」 一ヶ月程度は持病の腸捻転が悪化したことにしといてヨロシク。 「はははは、お茶目だなあ。腸捻転が持病だったらとっくにお陀仏だぞ?」 「だったら肝硬変でも脳溢血でもいいから適当にッ!」 庭の植木に水をやってた父親にも一喝して自転車にキーを差し込み、支えを跳ね上げる。 「行くわよ、轟天号――!」 ――名前の由来は愛読書より。いや、これはどうでもいいか。 若いころは首都高が庭だった父親が改造に改造を施した愛車を駆って、わたしは住み慣れた我が家を後にしたのだった。 「……逃げられた」 「逃げられましたね」 「からかいすぎた?」 「そうかもしれません」 「……」 「……」 「じゃ、俺、そろそろ追っかけようかな」 「では、私はそろそろ追跡に入りますか」 「……」 「……」 「だからおまえね。あいつと先に契約したの俺なんだから、もう帰れ」 「何を云う。彼女の願いがあったからこそ、私はここにいるのですよ。――それに、考えてみれば妥当でしょう?」 「――むぅ」 「片方だけが長期間存在するとなれば、人界のバランスが崩れかねませんしね」 「……じゃ、もしかたっぽ分の願いが叶ったら、かたっぽは素直に帰るって約束できるか?」 「そうするしかないでしょう。魂はひとつしかないんですし」 「名に賭けて誓う?」 「名に賭けて誓いましょう」 「――――」 「――――」 「魔の理において、ここに盟約を。賭けるは我が名、アスタロト」 「天の和において、ここに盟約を。賭けるは我が名、ゼルエル」 ひとという生き物は、追い詰められるととりあえず暗がりとかに隠れる習性があるのかもしんない。 だからこそ、『頭かくして尻かくさず』なんてことわざも生まれたんだろうし。 「……それはともかく、これからどうしようかな」 コンビニで買ったパンをもさもさ食べつつ、わたしは橋の下でため息をついていた。轟店号は傍に置いてる。 そこに、 「あーこら君、こんなところで何をしている。家出かね?」 「あちゃ」 家出人と思われたらしく、いや、間違ってはないんだけどけっして自分から望んでの家出ではないというかっていいわけはさておいて、お巡りさんが立ってた。 記録簿だか何だかを片手に、しかめっ面でこっちを見てる。 ……うーん、生身の人間に画鋲投げつけるってのは、さすがにためらわれる。 ポケットの小箱に触れた手を、一瞬迷ったのち、空手のまま引き抜いた。 「家出じゃないですよ、休日だし散歩してて日が強かったんで日陰で休憩してたんです」 「そうか、最近不審者が多いのでな、気をつけることだ」 「……そうですねえ」 力いっぱい頷いて、 「あんなんでもまっとうな『不審者』の範疇に入りますか?」 指さした先を目で追って、警官、その場に凍りついた。 まあ、空飛んでやってくる不審者なんて、きっと、一生のうち見れるかどうかってもんだろうし。 貴重な体験が出来ておめでとうございます。 「見ーっけー!」 「ふふふ、外ならば気配を辿るくらい朝飯前です」 天使も飯を食うのか。 いやそんなことはどうでもいい。 「お巡りさん、一歩右」 「え? こ、こうかね?」 「そうそう。そこしゃがんで」 「――き、君、いったいなにを」 「いいから――しゃがめ。」 ごす、と、いい音。 ちょっぴり強制的にしゃがんでいただいたお巡りさんは、何故が怯えた目でわたしを見てた。 それを横目に、草むらをがさごそ。……発見。 「あ、お巡りさん、頭は丈夫ですか?」 「――は?」 「丈夫じゃないなら、ガードしといたほうがいいかも」 「――え?」 にゅっ、と、草の間から取り出だしたるはスイッチひとつ。 「カウントダウン省略、ゴー!」 その瞬間。 お巡りさんは宙を飛び、天使と悪魔にときめきラブアタックしてくれました。 ありがとうお巡りさん、さすがは町のお巡りさん。 あなたのことは、きっと忘れません。3分くらい。 くんずほぐれつ落下するみっつの人影を確認して、わたしは再び自転車を駆った。 かすかな金属音といっしょに、ノブを回してドアを開けた。 「ただいまー」 「おや、早かったね」 「おかえりなさい、ちーちゃん」 ちょうど出来ていた夕食が、ほかほかと湯気を立てていた。 「旅はやめたのかい?」 「やめた」 「腸捻転と肝硬変と脳溢血は?」 「奇跡が起きて一日で回復した」 席について、手を合わせてる。いただきます。 今日の夕食は炊きたてご飯と大根おろしつき秋刀魚ときゅうり・ゴーヤ・シーチキン・ピーマンのマヨネーズ合え。ゴーヤは塩もみしてさっと茹でるのがコツ。あとお漬物。 ……美味しそう。 「そういえば、ちーちゃん。宿題は終わったの?」 「終わった。……ところで、ちーちゃんって呼ぶのやめてよ。もう恥ずかしいんだから」 「はは、ちーちゃんも年頃になったんだなあ」 「だから、今度からちゃんと名前で呼んでくれる?」 「はいはい、千破夜。これでいいかい?」 「千破夜ちゃん、お代わりは――――あらら?」 「おや?」 「あなた、千破夜ちゃんが煙のように掻き消えてしまったわ」 「うーむ、もしかしてちーちゃんは忍術を密かに特訓していたのかな」 「あらあら。いけないわあなた、ちーちゃんじゃなくて千破夜ちゃんでしょ?」 「おっといかん、そうだったな。まあ、おなかが空いたらまた出てくるだろう。千破夜っちーちゃんの分はとっておきなさい」 「ええ、判りました。千破夜っちーちゃんの分はとっておきますね」 玄関の前に形をつくる。 門を抜けて、もう一度表札を確認。 「……観音崎。観音崎千破夜か」 勇ましい名前である。我ながら。 「ま、いっか。名前ゲット完了」 姿を戻してVサイン。 ご飯も美味しかったし一石二鳥ってとこか? そうして夜闇に悪魔は溶け往く。 「……うーむ、ずる賢い」 さすが悪魔め、とつぶやきながら、植え込みの陰で膝を抱える。 必殺、灯台下暗し。 名前の交換を済ませてないのがこちらの決め手、どーやら気配を殺していれば勘付かれずに済むらしい。……疲れるけど。 それにしても、両親まであいつにだまされたのにはちょっと困った。これじゃあ下手に出て行けない。 ていうかお父さんお母さん、嫌味ですかあの新呼称は。正直、ちーちゃんのほうがまだマシだ。 いやいや、とにかくここで聞く相手もいない愚痴云っててもしょうがない、ご飯は部屋においてた非常食でがまんしよう。 周囲に何の気配もないのをたしかめて、壁とか雨樋とかをつたって部屋に舞い戻る。電気は点けない、念のため。 ビスケットとかクラッカーとか口に突っ込んで水を飲み、どさりとベッドに倒れこんだ。 一日の疲れがどっと出る。 眠りに落ちるその前に、『ひみつの☆おまじない』を取り出して、暗がりのなかで頁を開いた。 自分を基点に四方に六芒、中央に五芒をイメージ。紋様自体にはたしかに意味があるんだろうが、いかんせん、本が本だ。信憑性は薄すぎるけど、これまで役に立ったことを考えると、もしかして、これ、おまじないの名を借りた魔術書ではなかろうか? ――いや、まさかね。こんな魔術書があったら、ちゃんとした魔術師が発狂するわ。 いるのかどうか知らんけど。 「えーと、腕を天に向けてパー。呪文は“守護霊さま私をお守りください”……っと」 実にうさんくさいなコレ。 真面目にやってるわたしも相当うさんくさいけど。 ともあれ、これで他人に見つかりにくくなるおまじないは完了。 どうせ朝には解けるだろうけど、そのときはそのときに考えよう。 悪魔も天使もせいぜい今夜一晩は、町中探してまわるがいいわ。 うん、これだけでも胸がすくってもんである。 そんなこんなで眠りについて、数時間。 それは突然やってきた。 「ははははは、呼んだかね我が子孫!」 「わざわざ出没せんでいいわ草葉の陰から見守っとけ―――――――――!!!!」 ……いつだったか。 じいちゃんの家で見た、ご先祖様の肖像画に何故か瓜二つの男が虚空からわいて出てたので。 すでに恒例となりはてた、辞書投げをかましてみたのでありました。 うちには悪魔が一匹いた。 こないだ天使が一匹きた。 おかげで人外が二匹になった。 …………これから三匹になりそうです。 ……あのさ。 わたし、いったいどこで道間違えた……? |
「え? ちーちゃんの名前の由来? うふふ、それはね――」
「ご先祖様の名にちなんで付けたのさ。千の夜を破る、かっこいいだろう?」
「女につける名前じゃないと思います、お父さんお母さん」
「さて、ここで問題です」
「人の話を聞いて。毎回学校で一学期になるたびに先生が読めなかったりクラスの子に笑われたり変な顔されたりするんだから」
「噂の、観音崎家ご先祖様のお名前はなんでしょう?」
「千破夜ちゃんの由来、っていうのがヒントです」
「……このひとたちは、ほんとうに、人の親なのか……?」
「なお、読みと漢字まで当てられた方先着一名様には」
「人の話を聞けってのよ頼むからっ!!!」
――千破夜ちゃんが大暴れしたため、舞台壊滅――
■BACK■ |