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- みあげたそらのいろ -

 走りながら見上げた空は、遠く澄んだあおいいろ。
 雲が、風に吹かれて動いてた。

 走り続けなきゃ置いていかれる。
 判ってはいたけど、足は立ち止まっていた。


 空を見上げて深呼吸

 風が吹いてる
 雲が遊んでる

 地面を見下ろして手で触れる

 緑がそよいでる
 土があたたかい


 生きている


 そんな、単純なことばがひとつ

 ぽん、

 と

 胸のなかに生まれてふわりとふくらんだ



 いつでも
 どこでも

 世界に抱かれてる


 この貧弱な生き物たちは

 いつも

 泣きたくなったり焦ったり困ったり苛立ったり

 それでも


 ちょっと息をついて、目を閉じて

 大きく息を吸って、吐き出して


 生きてていいよ



 そのことばが聞こえたら、ほんの少しだけ力を抜いて

 世界を抱き返してみようか


 ありがとう



 深呼吸ついでに、つぶやいてみた。
 それから、足を踏み出して。一歩ずつ、歩きだした。


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近所の公園に桜が咲いていて。
何気なしに見ていたら、ふと。胸に迫る何かがありました。
うれしくて、優しくて、あたたかくて。
理由もなしに、感謝したくなりました。
そんな気持ち。


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