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けぶる優しい霧雨の日は 少しだけ貴方を思い出す しとしと、しとしと。しとしと、 雨というほど強くなく 霧というほど儚くなく だから霧雨っていうんだね 世界を優しく包むよう、慈しむよう降り注ぐ 霧雨に何もかもけぶり。 優しくけぶる霧雨に、要らぬと知りつつ傘などさして。 周りもわたしもぼんやりと、薄絹まとった世界の中に。 ひどく 幻想的な気分 そうして決まってこんなとき、貴方のことを思い出す。 幼い心の向かうまま ただ貴方の傍にいた 気持ちが薄れてしまったあとも 残り香を楽しむようにお互いに たまに手繰り寄せた糸 貴方の微笑う記憶はいつも 優しく霞む霧雨の向こう 貴方をなくした記憶さえ 霧雨の向こうに霞んだように 忘れて 糸を手繰ってしまう もうその先に 何の手応えもないことを 知っているのに手繰ってしまう ――糸のあまりの軽さに気付き 思い出しては立ち尽くす 誰と、この世界に霞むつもりだったの? けぶる木々の根元には いつかうずめた鳥の骸 このこが天へ還るとき 光の道が降るならば 霧雨にけぶるこの景色、貴方に届けてくれるといいね ――どうか また 次にも貴方に逢えますよう 霧雨のけぶる世界の中 ただ祈る |
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