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- 風の王と炎の子 -



 風王は、炎の子に問いかけました。

「次代の炎王たる力のおまえがどうして、旅などしている?」
「俺は水の資質を抱えているから、王には不適らしいんだ」

 だから追放された。

 そう云って、炎の子は笑いました。

「大地に育まれた風王、あなたなら判るだろう?」

 風王も笑いました。

「まさに。相反を憂う者たちなどもう見飽きた」

 ふたりは笑いました。

「対極は相容れぬモノではない」
「対極はひとつのモノの端と端」
「表は見る者によって容易く裏と変じる」
「裏は捉える目によって表へと変じる」

 くつくつ、くつくつ。ふたりは共謀の笑みを浮かべます。

「風は炎をより強く盛らせる糧となる。私はおまえに手を貸そう」
「炎は風を生み出す力となる。俺はあなたにその未来を誓おう」




 彼らは語る。
 厭うなかれ忌むなかれ。
 相反を矛盾を抱ゆることを。



 なればこそ、なればこそ。それ故にこそ。
 それ故にこそ、世界は生まれたのだと彼らは語る。



以前、トップに使っていた絵に、かぶせていた文章。
発掘できたので、アップしなおしてみました。
何気に、このやりとりは気に入っていたりします。

一様でないから、この世はたぶん辛くて大変で、でも面白いのです。きっと。



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