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- ありがとう -

 子供にお母さんが云った

「今こんなに便利に暮らせるのは、昔の人ががんばって道や公園やお店をつくってくれたからよ」

「昔の人が、これを作ったの?」

「そうよ」

「地球の上に、作ったの?」

「そうよ」

「地面を削ったり、川の底をコンクリートで固めたり、山を崩したりして、作ったの?」

「そうよ」

 お母さんに子供が云った

「偉いんだね」

「そうよ、昔の人は頑張ったの」

「違うよ」

 お母さんは、どうして? と子供に訊いた

「昔の人が頑張ったから、今こうして暮らすことができるのよ」

「違うよ。削られたり崩されたりしても何も云わないでくれた、地球が偉いんだよ」

「・・・・・・」

「僕が削られたりしたら、すごく痛くて泣いてしまう。そんなことする人、追い出したくなるよ」

「そう・・・」

「だから、僕は、昔の人より、痛いのに我慢してくれている地球に『ありがとう』って云うよ」

 子供にお母さんは云った

「そうね」

 それからふたりは、大きな声で云った

「ありがとうございます」


    どういたしまして、と、誰かが云った





      +作成背景+

ふと思いついた文章。思いついたときは、もうちょっと殺伐としてました。

ちょっと、今歩いてる地面の上にあるものを想像してみましょう?
ここまでがしがしあちこちいじるのって、人間くらいでしょ。
削ったり壊したりして持ってきたものを、削ったり壊したりした上に作るのは、人間くらい。
その上に生きているのだから、恩恵を受けているのだから、今さら全部壊して自然に帰ろうなんて云わない。
っつかそんなことしても、今まで崩してきたものが元に戻るわけじゃない。戻せるわけじゃない。
その上で生きてるんだから。もう、業は背負ってるんだから。
だけど、せめてごめんなさいと云いたい。
生かしてくれてありがとうと云いたい。

ひとりひとりが、ひとりひとりの場所を出来るだけ傷つけないようにするなら。

誰もがそう思うなら、何処もがそうなるはず。

ひどく難しい。わたしもすぐに忘れそうになるし、忘れてる方が多いかもしれない。
でも、ふと思い出したときくらいは。
偽善でも自己満足でもいいじゃないか。
たぶん、忘れちゃいかんことなんじゃないかと思う、わたしはね。

 ごめんなさいとありがとう。

 いつかこの生き物が滅びるときがくるなら、そのときは自滅ではなく、世界に殺してほしい。
 その権利が、この大地にはあると思う。
 そんな優しい手を差し伸べてくれるかどうか、判らないけど。


『なんであんたの思考はそう、右斜め45度上空をアクロバットなのよ』とか
ツッコミがあればいつでもどうぞ。むしろお待ちしてます(笑)


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