光が迸る。嫌な浮遊感。
それが消えた後、バルレルの目の前にあったのは、随分と久しぶりに見る夜色の双眸だった。
「バルレルっ!」
ごめんねごめんねごめんね! おかえりー!!
全力で抱きついてくる少女を、バルレルは、ぽかんとした顔で受け止める。
人間でいえば子供の姿である彼には、それでさえも体格的にちょっと一苦労だったけど。
そうして周囲を見渡せば、そこは、たしかに自分たちがあの日、いや、“今日”ミモザにすっ飛ばされる直前までくつろいでいた部屋だった。
窓の外には電気ウナギの名残もある。
「……戻れた、のか」
「うん! そうなの!」
いろいろあったけど、ちゃんとこの日の3時間後に戻れたんだよー!
抱きつく少女の身体の向こう、ギブソンからくどくどと説教を受けているミモザがいた。
少し離れた場所には、いつの間に増えたのだろう。
何故か放心している自称アルバイターとか、遠い目になってる蒼の派閥の総帥とか、よいどれ占い師までがいた。
そうして。
バルレルは、少女の異変に気づく。
「オイ」
「うん?」
べり、と彼女をひっぺがし、バルレルはまず服を示した。
「姿が戻ってんのはともかく……なんで服まで変わってんだ?」
「…………」
とたん、少女のみならず、周囲の人々すべてが生ぬるい笑みを浮かべた。
「バルレルは、さ。あれからどうしたの?」
吹っ飛ばされたあと。
おそるおそる、少女がそう訊いてきた。
何を判りきったコトを――そう邪険に云おうとして、ふと。
ある可能性に、彼は思い至る。
「オレぁ、あれから直行こっちだ」
とりあえずそう答え、ひきつりながら口の端を持ち上げた。
「……テメエは?」
「あはは」
乾いた笑いののち、少女は、自称アルバイターをちらりと見て――告白した。
「もひとつ、時間旅行してきてました」
その答えを聞いたバルレルが、ミモザに説教しているギブソンの援護射撃に入ったことは云うまでもない。
だけどそれはまだ、少女――にとっては、数ヶ月の時間を越したあとのこと。
まだまだ、この場所への帰還は、彼女にとっては遠い遠い明日のこと。
これは、まだまだ遠い“今日”の、事後報告でありましたとさ。