BACK

・歩き続ける・



 たとえ汚濁にまみれても、
 たとえ血泥にしずんでも、
 たとえ深遠に墜落しても、
 たとえがんじがらめに縛られても、

 ただ、この意志がこの魂が、強く自分で在るのなら。


 まどろみも好き。
 うたたねも好き。
 ゆるやかに流れる時間も好き。

 けれど、通過点にしか過ぎぬ終着に、留まることだけは嫌。


 終わりなどない。
 永遠もない、永久もない。
 変わらぬものなどひとつもない。

 始まりだけがいつもある。

 ただそれだけを、知っている。



 そうしてたとえば、

 彼女は云う。
「あたしは、ほら。単に、突っ走るしか能がないわけだし。ブレーキ知らず?」

 彼女は云う。
「わたしは――知りたいから、かな。禁忌に触れてもここにいれる意味」

 彼女は、
「退屈嫌いだし。異端者認定でわたしの何が、どう変わるわけでもなかったしね」

 彼女は云う。
「大事なきょうだいと、一緒だから。わたしがわたしでいる限り、一緒にいたいから」

 彼女は、
「見てみたいんです、わたし。あのひとたちがつくる世界、いつか辿り着く場所を」

 彼女は、
「私――は、……こんなだけど、それでも、いや、それだから止まりたくないなって」


 向かうは各々の見据える先へ。

 たとえ苦痛に苛まれても、
 たとえ屈辱に蝕まれても、
 たとえ全てが変わり果てるのだとしても、


 ――――進む。先を。臨み。続ける。



 選択。
 いつもいつでも、いかなるときも。

 単純に。
 止まるか進むか。原初の問い。



 ――常に選ぶは、立つ場所の先。前へ。ただ、前へと。


■BACK■



夢、ではないけれど。
彼女らの、心持ちを少々。
ただいつでも、強く真っ直ぐでなくても、泣いて挫けても、そうあれるように。

……書いた奴にとっては、ある意味、彼女らの“そう”である覚書。